小論文試験は、
①高校で「小論文」といった授業科目が設定されておらず、
②また、「小論文」という高校教科書があるのでもなく、
③高校で「小論文の書き方」を教わった経験のない人も多い、
④そして、正答例を「なんとなく『眺める』」だけで、実力が自ずと向上するわけでもない
いわば「ないない尽くし」のなかで学習を進める対策が難しい科目です。
本番の試験で着実に高得点を取るには、
①論文とはそもそも何か
②論文のルール、作法、構造とはいかなるものか
③論理的思考力、表現力、読解力をどのように培うか
④図表読み取り問題で問われる《情報の取り出し》《解釈》《評価》
について理解したうえで、的確に対策と実践演習を進める必要があります。
合格者の声(2025年度大学入試)
2023年度出題 正答例その1
【中央大学 国際経営学部】2023年度 小論文解説・正答例(総合型選抜※旧AO入試 自己推薦入試)その1では、正答例として次のものを示しました。
※なお、正答例は以下の問題解説をおこなうための教材としての意味合いも持たせています。つまり、「試験本番でこうした正答例は、とても書けない」と感じる必要はありません。むしろ、この正答例から小論文対策の学習を進めてもらうことを企図しています(狙いとしています)。
この正答例では、問題解説を難関国公立や早慶水準あるいは大学院受験の想定としたため、特に三段落目以降を難しく感じる高校生がいたかもしれません。
また、設問3で「経済のグローバル化」と「経済格差の拡大」が相関関係というよりも因果関係に一般的にみなされる理由およびこうした命題の真偽を確かめる術(すべ)についてできるだけ具体的に説明せよと与えられています。
2024年10月実施(2025年度入試)の小論文・面接解説は以下を参照。
具体(性)と抽象(性)について
上記の正答例で提示した第三段落目(こうしたグローバル化の進展は…)以降の記述について、具体的ではないと感じる高校生がいるかもしれません。
しかし、実はなにが《具体(的)》で、なにが《抽象(的)》なのかを定義づけることは、なかなか難しい作業が必要です。とはいえ、これは小論文試験対策のなかで、わざわざ持ち出さなくてもよい、面倒な事柄かもしれません。
つまり、小論文試験の設問で与えられる「具体例をあげたうえで述べよ」について、そもそも「具体例とはなにか」を考えるようなものだからです。具体例とは自明であり、「具体例とはなにか」を考えることは《意味のないこと》だと感じる受験生も多くいると思われます。
では、なぜここであえて、具体と抽象について触れるかといえば、例えば仮に
- 経済的不平等・社会的不平等は、抽象的
- 勝ち組と負け組は、具体的
- 個人的福利と社会的厚生は、抽象的
- 社会制度および法制度、政治制度、市場制度、所有制度、家族制度は、抽象的
- (記述していないものの)日本の個人情報保護法、男女雇用機会均等法は、具体的
- 自由と平等は、抽象的
・・・ ・・・
と考えたとすれば、その背景に具体と抽象を分ける明確な基準があるということを意味しています。
この具体と抽象の判別基準を特定する作業が、とても難しいのです。
はたして、「社会」は具体でしょうか、抽象でしょうか?私は、具体であり、抽象であると考えます。
小さな子供に対して「ほら見てごらん、あれが社会だよ」と名指すことはできない。幼児は、保育園や幼稚園の教室をみて「これが社会だ」と感じるかもしれないし、「車が道路を行き交う様子から、社会とはなにかがたくさんいることだ」と思うかも知れません。
(蟻の集団を見て「これは『社会』を形づくっている」とみなすかもしれない)
「公共性」と言われれば、即座に抽象と答えるかもしれませんが、公園や公共交通機関は「あれが〇〇公園。あれが公共の□□電車、△△バス」と名指すことができることから公共性の一部を担っているかもしれないという意味で具体ともいえるかもしれません。
こうした具体と抽象をめぐる議論、例えば「社会とはなにか」は社会学の根本問題といえます。そもそも社会学という学問領域が立ち上がり、その後発展していった系譜そのものが、このテーマを内包しています。
2023年度出題 正答例その2
このような考えや議論があることを理解したうえで、大学受験における「できるだけ具体的に説明せよ」という設問に対応していると一般的にみなされるだろう答案も用意しました。どちらも正答例として示すもので、小論文試験の記述に唯一の正解がないことを知ってもらうためにも、二つ目の解答例を次の通り、掲載しておきます。
- 2023および2024年度の過去問を徹底分析し、受験者に求められている能力をレクチャーします
- それをふまえた、ほかでは提示できない具体的な対策問群を教えます
- 小論文対策としてはもちろん、面接対策にも役立つ問題群の答案を執筆することで着実に合格できる力を養うことができます
※本番の試験まで2カ月を切った受験予定者にも対応します
2025年度試験に向けた対策の重要ポイント
注目してほしいのは、直近の過去問で竹内啓が取り上げられていることである。近年の社会科学における数値や数量によるデータ分析の手法に関する議論が盛んになっている状況がタイムリーに反映されている。そして、そうした議論に関する考察は、その他の大学入試小論文でも出題がみられる。
年度 | 出典 |
2023年度 | 齊藤誠(2021)『教養としてのグローバル経済―新しい時代を生き抜く力を培うために』有斐閣 |
2024年度 | 竹内啓(1971)『社会科学における数と量』東京大学出版会 |
受講生には、①[データ分析に関する類題]、②[男女間賃金格差に関する図表を含んだ類題]、③[日本企業のDX状況]、④[SDGsと日本の中小企業]、⑤[数値化と途上国支援]、⑥[人的資本投資]、⑦[ウェルビーイングと障害]に関する類題など、中央大学国際経営学部[自己推薦入試]の小論文対策となる問題をピックアップし、提出答案に対する添削講評を進めています。
※なお、正答例は以下の問題解説をおこなうための教材としての意味合いも持たせています。つまり、「試験本番でこうした正答例は、とても書けない」と感じる必要はありません。むしろ、この正答例から小論文対策の学習を進めてもらうことを企図しています(狙いとしています)。
精度の高い分析に基づいた小論文対策で志望校合格へ
~質の高いオンライン個別指導で「受かる」小論文が書けるようになる~
総合型選抜
小論文対策にくわえて志望書添削・
面接練習・対策も行いたい方向け
一般選抜
難関中堅国公立・私立大学の小論文試験対策
として本格的な準備を行いたい方向け
[直前対策コース]
1カ月コース
[早期対策コース]
2カ月コース
[特別対策コース]
3カ月コース
基本講座
国公立二次対策も
※専科講座以外の大学学部
※総合型選抜&一般選抜
※1・2・3カ月コース
早慶専科講座
一般選抜・総合型選抜
※早慶各学部全般
※総合型選抜&一般選抜
※1・2・3カ月コース
スポ科専科
一般選抜・総合型選抜
※2025年度総合問題対策
※スポーツ推薦選抜&一般選抜
※1・2・3カ月コース
慶応文専科
一般選抜・総合型選抜
※難度の高い小論文対策
※自己応募推薦&一般選抜
※1・2・3カ月コース
学芸大専科
一般選抜・総合型選抜
※各学類・コースに対応
※学校推薦型選抜&一般選抜
※1・2・3カ月コース
小論文試験の答案技術という観点から説明します。
- 二段落目
《国際社会における難民、移民(問題)》
《国際金融における流動性(問題)》
《情報通信技術の発展に裏打ちされたグローバリゼーションのなかでのメディア》
を置く順序を変更。- 三段落目
暦年や金額を示すことで具体性を演出し、できるだけ平易な表現を心がけた。
また、重要な点は、以下グローバリゼーションの項目のなかで説明されている内容を盛り込んだ点です(以下のリンクから確認ください)。
【中央大学 国際経営学部】2023年度 小論文解説・正答例(総合型選抜※旧AO入試 自己推薦入試)その1 埼玉県内進学校 現役生|過去問の精緻で詳細な分析から類題を選定し、徹底した実践演習で苦手な小論文を克服して合格!(※画像クリックで合格者インタビューへ) はじめ…- 巨大企業による世界経済の統合化(の新たな局面の展開)
- インタ ーネットやコンピュータにもとづく情報通信の発展に支えられたメディア、 ならびに大衆文化の世界的な展開と生活スタイルの均質化といった事象の広がり
ポイントは統合化と均質化を並置し、グローバリゼーションの特徴をコンパクトに示したことです。一段落目で示したグローバリゼーションの特徴をさらに詳しく説明し、論を展開させているわけです。
小論文試験における「あなたの考えを述べよ」にまつわる誤解
「あなたの考えを述べよ」と問われた際に、
「私らしい、他の誰も思いつかないようなオリジナルの考え方を示さねばならない」
と条件反射的に反応することはいわば「幻想」であり、新聞やテレビのニュース、また小論文試験対策としてストックしておいた知識や概念を駆使しながら、その組み合わせ方にこそ、「個性」あるいは「オリジナリティ」を表出していくのが小論文答案であることを強調しておきたいと思います。
これは高校生、大学生のみならず、プロの研究者でさえ、人文社会科学の領域において踏襲している《(小)論文の書き方》です。
ましてや高校生や大学生に対して「こんな革新的で、誰も思いつかないような論じ方や考え方、視点や分析は、初めて見た(読んだ)」などということは大学入試小論文答案にまったく求められていません。
蓄えてきた背景知識に基づきながら、しっかりと着実に論を構築していけばよいのです。
立論(論を構築する)とは、意見や主張が示された根拠に支えられており、論理的な説得力があることを指しています。
もちろん、そこには《そもそも(小)論文とはどのようなものであるのか》に関して理解し、文章で実践的に書き表していく基礎的な力が問われます。
こうした理解と実践は、各講座で共通してレクチャーしていく内容です。
難関中堅国公立・早慶小論文向け小論文対策の決定版
以上のような書き直しは、試験会場の一発勝負ではない状況だからこそできるともいえます。あるいは、暦年や金額を辞書やインターネットで確認したうえで加筆修正できる状況だからこそ、書き分けが可能となるわけです。
しかし、試験会場でスマホを使いながら書くことはもちろんできません。だからこそ、事前に「武器」を装備しておく必要があるわけです。
したがって、小論文試験の事前対策としてノートを用意し、各種のデータを頭の中の棚にしまっておく必要があるのです。
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