【中央大学 国際経営学部】2023年度 小論文解説・正答例(総合型選抜※旧AO入試 自己推薦入試)その1

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目次

はじめに

covid-19(新型コロナウイルス感染症)に関する小論文出題が一巡した印象のあるなか、ウクライナ情勢のみならず国際緊張が高まり続けているようにもみえることから、文系学部の2024年度小論文試験において改めて「グローバル化とはなにか」が問われる可能性があります。そうした意味でも、今回取り上げる中央大学国際経営学部の問題は、今年の試験対策として重要だとも考えられます。

そこで、問題解説を詳しく行いましたので、小論文が試験科目に設定されている受験生の皆さんは、以下の投稿でしっかりと対策することを勧めます。問題解説は難関国公立や早慶水準を想定しているため、説明がやや難しいと感じる受験生の方がいるかもしれないものの、この解説をきちんと理解すれば、他のテーマ出題、例えば格差」に関する記述の対策にもなります。しっかりと学習しましょう。

2025年度入試 募集要項

2025年度入試について募集要項に沿いながら抜粋のうえ、概説します。

募集人員は25名。1次選考合格発表日は2024年10月14日(月)、2次選考試験日は10月26日(土)です。

2次選考は小論文面接です。

※なお、当スクール代表講師は、採用責任者として企業面接官を担当した経験とともに、自身が修士課程・博士課程を受験する際には受験者として面接選考に臨んだ経験の双方があります。面接指導を希望する際はご相談ください。

2023年度入試 出題内容

夏休みが終わると受験「本番」に向けた学習に力を振り向ける時期に入ります。「小論文は、副科目」と準備を後回しにしてしまうと、「早めにやっておくべきだった…」と直前期に後悔することになりかねません。受験に打ち勝つためには夏からの準備が必須です。夏の期間を小論文対策のために有効活用しましょう。
※9月中いつからでも対策開始への対応が可能な講座・コース群です

2023年度出題 正答例

※正答例および解説を公開します

【中央大学 国際経営学部】総合型選抜 自己推薦入試 小論文試験向けSpecial Lecture Program
  • 2023および2024年度の過去問を徹底分析し、受験者に求められている能力をレクチャーします
  • それをふまえた、ほかでは提示できない具体的な対策問群を教えます
  • 小論文対策としてはもちろん、面接対策にも役立つ問題群の答案を執筆することで着実に合格できる力を養うことができます

※本番の試験まで2カ月を切った受験予定者にも対応します

2025年度試験に向けた対策の重要ポイント

 注目してほしいのは、直近の過去問で竹内啓が取り上げられていることである。近年の社会科学における数値や数量によるデータ分析の手法に関する議論が盛んになっている状況がタイムリーに反映されている。そして、そうした議論に関する考察は、その他の大学入試小論文でも出題がみられる。

年度出典
2023年度齊藤誠(2021)『教養としてのグローバル経済―新しい時代を生き抜く力を培うために』有斐閣
2024年度竹内啓(1971)『社会科学における数と量』東京大学出版会
直近の出題課題文

 受講生には、[データ分析に関する類題]、[男女間賃金格差に関する図表を含んだ類題]、[日本企業のDX状況]、[SDGsと日本の中小企業]、[数値化と途上国支援]、[人的資本投資]、[ウェルビーイングと障害]に関する類題など、中央大学国際経営学部[自己推薦入試]の小論文対策となる問題をピックアップし、提出答案に対する添削講評を進めています。

※なお、正答例は以下の問題解説をおこなうための教材としての意味合いも持たせています。つまり、「試験本番でこうした正答例は、とても書けない」と感じる必要はありません。むしろ、この正答例から小論文対策の学習を進めてもらうことを企図しています(狙いとしています)
※この正答例はクベルナレッジアカデミーが独自に作成したものです。本文、写真、および絵のすべてに関する著作権はクベルナレッジアカデミーに帰属しており、無断での複製や転載は厳しく禁じられています。 他のウェブサイト、印刷物、電子メディアなどへの転載は一切許可されません。 無断転載には法的措置を取る可能性があります

正答例その2は以下を参照。

文系小論文基本講座
小論文試験、面接について現職大学教員へ取材
(※画像クリックで該当ページへ)

※インタビュー冒頭部分(約9分)
※カフェでの取材だったため、周囲の音が入っていることを予め了解下さい

2023年度出題 問題解説

中央大学国際経営学部は、自己推薦書を英語で記述させるなど、学部名の通り、国際性を意識した出題傾向にあります。2023年度は、『教養としてのグローバル経済』(有斐閣)の冒頭が課題文として採用されました。

経済決定論とは?

課題文は、「経済のグローバル化における勝ち組と負け組」「経済格差の拡大」を見出しとして、《経済のグローバル化》《経済格差の広まり》が単純な因果関係にあるのではなく、相関関係にある点を示すと設定されています。

つまり、一言でまとめるならば、経済決定論を排していく旨が謳われています。

経済決定論とは、高校生の皆さんにとってやや難しく感じるかもしれませんが、英語でいえばeconomic determinism、つまり経済があらゆる事象を決定していくという考え方のことです。経済還元主義ともいいます。

これは、遡っていけば、マルクスが『資本論』で示した「上部構造」「下部構造」という考え方に接続している、大きな影響を受けている点に気が付くことになります。

上部構造とは、観念や社会意識とその創造物ということであり、国家政治法律宗教芸術学問教育などを指しています。社会意識生産領域とも捉えられます。

一方で、下部構造とは衣食住、つまり人間が必要とする物質生産の領域のことで、これをもって唯物論(materialism)ということになります。

そして、下部構造を重視するのが経済決定論経済中心主義経済還元主義の立場です。その論理が徹底されていけばいくほど、人間の自由の余地は縮減していく(小さくなっていく)。

他方で技術がすべての事象を決定していくという考え方もあります。
これは技術決定論技術還元主義技術中心主義で、technological determinismといいます。例えば、「AIが多くの職業に取って替わられる」といったような雑誌やテレビでよく目にする言説は、こうした技術決定論に依拠していると捉えられます。
(技術決定論に興味がある人は『社会は情報化の夢を見る』(佐藤俊樹)を読んでおくことを勧めます。「『情報社会が社会のしくみを変える』ように見せるからくりの正体」(p.72)について論じている)

マクルーハンという著名なメディア学者は『グーテンベルグの銀河系』という著作のなかで、「メディアはメッセージである」という有名なことばを残しています。メディア自体が伝える情報がメッセージであり、内容を考えること以上にメディアそれ自体の特性を考えることが重要であると示しました。同じコンテンツ(例えばニュース)であっても、オーディエンスのニュースの受容のあり方そのものが、新聞なのか、PCなのか、スマホなのかで異なるという視座を示唆しています。これは決して技術決定論ということではなくテクノロジーと人間の欲望が互いに影響を及ぼす相互作用から我々のメディア環境は形づくられていることを示しています。技術的に可能であったとしても、それは未完で終わるケースもあるのです。

つまり、このように経済技術などによる、いわば「単独犯行説」の支持が経済決定論技術決定論であるともいえます。

しかしながら、社会のなかで、経済科学(技術)のみならず、政治宗教芸術教育社会運動家族といったジャンルも重要な(サブ)システムを形づくっています(図を参照)。それらは、社会を成り立たせる制度である法制度政治制度とともに市場制度所有制度家族制度などとして存立しています。
(ドイツの有名な社会学者であるニクラス・ルーマンが、社会システム理論として提示しています)

やや難しい説明であったかもしれませんが、こうしたいわば「経済単独犯説」を問い返す視点が、解答の際のポイントとなります。
なぜなら、こうした視点がなければ、《経済のグローバル化》と《経済格差の広まり》の因果関係に関して問われた【問2・3】に回答することができないからです。

そうした意味で、この中央大学の出題は良問だといえます。

ハイレベル小論文 実力錬成講座

難関国公立・早慶小論文向け早期対策の決定版

https://kuberu-ac.com/highlevel-apply/

グローバリゼーションとは?

では、グローバル化、つまりグローバリゼーション(globalization)とは何でしょうか?

一言でいえば、グローバル化は経済のことだけを指していません。

例えば、『社会学事典』(弘文堂)には次のように説明されています(以下、抜粋)。
長くなりますが、この出題以外でも必ず役立ち、また必要となる知識でもあるので、引用しておきます(「グローバリゼーション」右側の▼をクリックで開閉)

グローバリゼーション

Ⅰ【用語としてのグローバリゼーション】

歴史の大きな転換期にあるという認識が拡がり、その時代の転換をとらえる言葉として、グローバリゼーションという用語が使われ、社会科学から人文科学までの多くの学問分野において学術用語として定着しつつある。用語としての拡がりは、
(1)政治/経済から文化/社会にまたがる、国民国家を超えた事象の拡大を明らかにするとともに、
(2)学問分野の方法を含めた分析枠組や思想の転換を志向し、さらに
(3)近代とは区別された現代という時代をとらえようとする歴史認識の問題を射程に含めてきている。
… …

グローバリゼーションは、しばしば国際化とほぼ同義的に用いられたが、冷戦体制の崩壊やネオリベラリズムの浸透以降、国家を分析単位とする「国際 international」とは区別して、国家という境界を越えた意味を込めて使われるようになった。
… …
グローバリゼーションという問いのたて方は、近代という時代あるいは近代性modernityや国民国家を、非西欧を含めて問い直す作業である。

Ⅱ【ナショナルとグローバル】

近代と呼ばれる時代は、一方では世界的な結びつきを強めながらも、他方ではナショナルな単位の「想像の共同体」(ベネディクト・アンダーソン)を創り上げてきた。これは、植民地化された地域における国家形成も同じことであり、植民地(民族)解放は国民=民族形成過程として近代国家を構築してきたのである。

しかし、グローバリゼーション研究は、中心や中核を頂点とするヒエラルキーとその拡がりととらえてきた観点とは異なる。グローバリティナショナリティ相克共振が問われるグローバリゼーション研究の課題は、世界システム論のような、経済はグローバルであり、政治や文化はナショナルであるという議論とは異なるまた、帝国主義や植民地主義の継続あるいは延長としてとらえる議論とも区別される。さらに、グローバリゼーションを西洋化やアメリカ化と同義ととらえることもできない。

グローバリゼーションとして問題になっているのは、近代におけるグローバル性 gobalityが、現代においてどのように変化してきているのかを問うことにある。… …

グローバリゼーションによって表れているのは、国民と領土との一義的な一致として表れてきた国民=国家の溶解であり、境界を横断する統合分断均質化差異化包摂排除であり、グローバリズムナショナリズムグローバルローカルとの共犯関係の進展であり、共振である。

Ⅲグローバリゼーションの政治/経済と文化/社会

グローバリゼーションという語が広く流布し、認知されるようになったのは、一方では金融やサービスを含めた巨大企業による世界経済統合化の新たな局面の展開と、他方ではインタ ーネットやコンピュータにもとづく情報通信の発展に支えられたメディア、 ならびに大衆文化の世界的な展開生活スタイル均質化といった事象の広がりにあった。

こうした統合化均質化は、標準化同質化した世界を生み出すとともに、他方では世界的な規模での包摂排除統合分断格差の拡大を引き起こしてきたのであり、反グローバリズムの運動も、これまでの社会運動の枠を越えてグローバルに展開されてきた。さらに、市場化の急速な浸透デジタル化やマニュアル化の普及は広範な影響をさまざまな分野に及ぼし、グローバリゼーションと呼ばれる事象は、 経済的ならびに文化的な領域を越えて、政治や法、歴史や思想などを含む領域において、20世紀から21世紀への時代の転換期に起こっている変化を表現する言葉として、ほぼ同時代的に用いられるようになった。… …

世界経済支配の新しい地理は、文化や政治などの動きと連動し、ナショナリズムやローカリズムとの共振へと拡がり、国民国家の変質を引き起こしてきた。経済はグローバルであるが、文化や政治はナショナルであるといわれてきた。しかし経済的な統合化市場経済の浸透と平行して大衆文化といわれてきたものや人々の生活様式価値規範などの同質化が世界へと拡がり、CNNなどのグローバルメディアの台頭、ディズニーやハリウッドの世界戦略、マクドナルドやショッピングモールにみられる消費スタイルの世界的拡散、オリンピックやサッカーのようなスポーツ競技、世界遺産やリゾートを含めた海外旅行の拡大などが、グローバリゼーションを表すものとして取り上げられてきた。

また政治においては、国家間の交渉の場としての国連などの国際機関とは異なるグローバルな権力のあり方として、ダボス会議や世界社会フォーラムなどが注目され、人権や環境という国際レジームが個別の各国権力を規制するようになってきている。さらに、多国籍企業や国際NGOなどの国境を越える法形成主体の台頭によって、国家主権が脅かされてきているといわれている。これらは、これまで国内政治と国際政治、国内法と国際法といった、国内と国際という分断が次第に不可能になってきていることを意味する。

グローバリゼーションを研究するということは、ネーション(国民)を基盤とする国家(ステーツ)単位で構成されてきた近代世界の空間が、 経済だけではなく政治や文化などあらゆる領域において変質過程にあり、それらをとらえる理論や思想が問い直され、歴史認識の転換が求められている。

『社会学事典』(弘文堂)pp.321-323 伊豫谷登士翁

上記(「グローバリゼーション」右側の▼をクリックで開閉)で紹介した「グローバリゼーションとはなにか/なにを指し示しているのか」に関する背景知識があれば、この小論文で書くことは自ずと決まってきます。
※参考までに触れておけば、広島市立大学国際学部[前期]2023年度小論文試験で伊豫谷登士翁『グローバリゼーションー移動から現代を読みとく』が課題文として採られ、出題されています

つまりグローバル化(グローバリゼーション)という事象は、人・物資・資金・サービス・情報などの移動や交通を指し示し、経済のみならず政治や文化や社会にまたがる、国民国家を超えた事象のことです。
(興味がある人は、ジョン・トムリンソン『グローバリゼーション―文化帝国主義を超えて』を購読することを勧めます)

これをさらに敷衍すれば、問題文にある「勝ち組・負け組」という格差は、経済的な格差だけではなく社会的な格差をも一般的に意味している通り、経済的な不平等社会的な不平等の双方から捉えるべき対象です。

正答例では、社会科学の教員で知らない人はいないだろう、ジョン・ロールズ『正義論』を典拠にして「個人的福利」=自由「社会的厚生」=平等を挙げながら、説明の記述を進めました。
(高校生の答案としては水準が高くなってしまったものの、これまで述べてきた説明を行う材料としての意味合いもあり、掲載しています。大学院受験を目指す人にとっては、この水準で答案を書きたいところです)

小論文の対策学習

答案例では、字数が少ないため、言及していませんが、図表の右側に示した事柄や要素がグローバリゼーションには関わっています。国連(国際連合広報センター 「不平等 ― 格差を埋めよう」)からの抜粋を紹介しました。

  • 賃金の低下と労働分配率の低下
  • 先進経済圏における福祉国家の衰退
  • 開発途上国における社会保障の不備
  • 税制改正
  • 金融市場の規制緩和
  • 急速な技術的変化と自動化

教育/ジェンダー(男女雇用)/性的志向/地域/年齢/民族/障害/階級/宗教

【基本サービス】医療/教育/水/衛生

  • 移民排斥
  • 極端なナショナリズムの勃興

ここに引用紹介した「表現や言葉」(事柄や事象)をメモ帳や小論文対策ノートに書き写し、小論文の出題内容に応じて頭の中の棚から引き出しながら、試験会場で一気に答案を書き上げる(まるで虎が獲物を仕留めるように一発勝負として小論文試験を捉える意識が肝要です)ことは、きわめて重要です。

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総合型選抜
小論文対策にくわえて志望書添削
面接練習・対策も行いたい方向け

一般選抜
難関中堅国公立・私立大学小論文試験対策
として本格的な準備を行いたい方向け

[直前対策コース]
1カ月コース

[早期対策コース]
2カ月コース

[特別対策コース]
3カ月コース

基本講座
国公立二次対策も

※専科講座以外の大学学部
※総合型選抜&一般選抜
※1・2・3カ月コース

早慶専科講座
一般選抜・総合型選抜

※早慶各学部全般
※総合型選抜&一般選抜
※1・2・3カ月コース

スポ科専科
一般選抜・総合型選抜

※2025年度総合問題対策
※スポーツ推薦選抜&一般選抜
※1・2・3カ月コース

慶応文専科
一般選抜・総合型選抜

※難度の高い小論文対策
※自己応募推薦&一般選抜
※1・2・3カ月コース

学芸大専科
一般選抜・総合型選抜

※各学類・コースに対応
※学校推薦型選抜&一般選抜
※1・2・3カ月コース

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