横浜市立大学 国際商学部A方式・B方式[前期]一般選抜【小論文解説】

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横浜市立大学 国際商学部A方式・B方式[前期]一般選抜 小論文の概要と傾向

試験の概要

出題形式:
※大学HPで過去問公開

配点:200/500

時間:

出題の傾向

難易度:標準

※以下、青地はリンク

【ポイント】
課題文は、日経の記事である。記事中にある通り、2019年にアフリカ開発会議(TICAD)7が横浜で催されたのち、2022年にチュニジアで8回目の国際会合として開催されたTICAD8に関する新聞記事である。

設問は4題、設定されており、そのうち3題は要約、残り1題が本文をふまえた自身の論考を350字という短い字数で答えさせるものである。制限時間が60分であるため、要約として100字×2題+200字×1題の小計400字、意見陳述が350字で合計750字を手際よく捌かないとならない(400字詰め原稿用紙で2枚弱)。
小論文が苦手だという当校受講生に新聞要約を基礎訓練、自主トレとして勧めてきた。その制限字数は100字である。従って、字数は相同で、やはり短い課題文の要約が小論文対策の基礎を形づくる訓練であることを改めて認識させられた次第である。

さて、設問である。そもそもテーマとして取り扱われている会議の「開発」という語に注目する必要はある。2023年度の明治学院大学国際学部国際学科(学校推薦入試)で出題された課題文でも「『開発』という言葉につきまとう、うさんくささ」と同時に、望ましい開発と望ましくない開発を答えさせる設問が誂えられていた。つまり、批判的な考察が(4)の設問では必要となるはずである。

より高い水準の答案執筆を目指す人に向けて、参考までに紙上講義として次のことに触れておこう。
G・C・スピヴァクによる『サバルタンは語ることができるか』という著名な論考がある。インド西ベンガル出身の文学批評家でコロンビア大学教授の彼女は、「フェミニズムとポストコロニアルの問題圏の交差する地点に立ったところから出身地インドにおける寡婦殉死(サティー ※夫の亡骸とともに焼身自殺をすること)のコロニアル言説の研究に取り組み」(社会学事典、弘文堂)、「従属的地位にあるサバルタンの女性について、知識人は語ることができるのか」(みすず書房解説)を論じた。
※コロニアリズム(colonialism)とは、植民地主義のこと。E・サイードも重要論者である。
神戸大学 国際人間科学部 グローバル文化学科[後期]一般選抜【小論文解説】も参考になるだろう)

つまり、日本をはじめとする先進諸国が、途上国であるアフリカ諸国を開発するとは、どのようなことなのかという根本的なテーマをこの課題文、設問は内包している。

グローバリゼーションが、経済のみならず、政治/外交から文化/社会にまたがる、国民国家を超えた事象の拡大であり、チュニジアに端を発した「アラブの春」と呼ばれる民主化運動とその後、民主主義の危機的状況にある点から「日本のアフリカビジネス戦略再考」はただ単に経済的、商業的な視点からのみで処理できないテーマだとわかるだろう。
(グローバリゼーションについては、【中央大学 国際経営学部】2023年度 小論文解説・正答例で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてほしい)

したがって、設問(4)の「日本政府とアフリカ諸国の関係性」について記述する際に、経済的、商業的な観点のみならず、アフリカ諸国の政治状況、民主主義状況、文化的状況、社会的状況といった複合的な視角が答案記述に必要とされる点が理解できると思う。

この指摘を大きなヒントとして過去問の解答執筆に取り組んでほしい。

※1 受講生には繰り返ししつこく伝えてきたところではあるが、本試験では当校なりが臨席したうえで隣で答案執筆の介助や補助線を引くことはもちろんできない。サッカー選手のように、ピッチ上に出場した選手としてドリブル、パス、ポジショニングの自己判断を下しながらそれらを一人で行い、局面を打開せねばならない。本解説も「受験生の多くが知りたい、手っ取り早い正答例や正答パターン」を示せば、当然それに引きずられて各位が答案執筆をすることになるため、極力避けるよう配慮したいと考えている。文章を書くという行為自体がきわめて内省的な営為だからである
※2 また、参考までに付言しておけば、国公立・私立を問わず、また志望校の難易を問わず、上記の他大学出題解説は役に立つものなので、閲読しておいてください(×「国公立だから関係ないや」「私立だから見なくていいか」)
※3 答案を執筆した際は、出題分析の質の高さが担保された添削講評を受ければ、いわゆる書きっぱなしにならずに済むため、当校ほかで提供している「単発添削」や「講座受講」を活用することを勧めておきます
※4 なお、当校講師は社会情報学、メディア研究で博士課程で修学した経験や私立大学で「情報社会論」の講師を務めた経験があるため、東大情報学環(大学院修士課程)入試社会科学系大学院修士課程入試の論文指導も可能です

サバルタン

英国陸軍で陸軍大尉より下位の士官をさし、「従属者」という意味のサバルタンという用語を、文化批評に導入したのはグラムシ, A.で、彼の思想を受け継ぎ、英国植民地支配下でのインド民衆の抵抗運動における言説の役割を明らかにしたのが、グーハ,R.たちサバルタン・グループである。さらにポストコロニアム・フェミニズムの文脈で、この語を現代批評に根付かせたのが、スピヴァク,G.C.だ。彼女は『サバルタンは語ることができるのか』で、ヒンドゥー教のサティー(寡婦殉死)を取り上げ、それがインド人支配階級男性による「献身」言説か、植民者イギリス人男性による「犠牲」言説かの2つに回収されてきたと指摘する。良き妻を賞賛する父家長主義と、現地女性を植民者が救済するという帝国主義との共犯関係において、サバルタン女性は消去され、彼女の声は聞かれることがないのだ。
(現代社会学事典、弘文堂)

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過去問以外に、どのような問題に取り組むことが小論文対策になるかわからないといった相談の声が寄せられることがあります。
当校では、アドミッションポリシーを分析し、過去問以外で事前に取り組むべき対策問題を選定して提示するほか、時事課題論文については新聞記事から作問して用意するケースもあります。

参考)東大情報学環・お茶の水女子大・一橋大 院試過去問

例えば、東大情報学環(大学院修士課程)入試では、次のように出題される(2020年過去問)。
院試では課題文は与えられないことが一般的です。

以下はお茶の水女子大と一橋大の修士課程の過去問(2023年)。

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