名古屋市立大学芸術工学部(建築都市デザイン学科)[後期]一般選抜 小論文の概要と傾向
試験の概要
出題形式:
配点:100/100 ※小論文もしくは実技からいずれかを選択
時間:ー
出題の傾向
難易度:難
【ポイント】
令和5年(2023年)度
上野千鶴子『家族を容れるハコ 家族を超えるハコ』が課題文として採られている。
毀誉褒貶があるとはいえ、東大の入学式で祝辞を任された通り、東大で教鞭をとっていた以上、基本的に学術的にはきわめて真っ当で、当校講師も上野が編者を務めた『構築主義とは何か』を講読した記憶がある。上野はWikipediaに記載されているように、フェミニストの社会学者である。
現代日本における住宅およびその設計思想と家族関係の変化との関係に着目した論考である。ユニークなのは、この論考を芸術工学部建築都市デザイン学科が小論文試験の課題文として採用していることである。つまり、建築家や工芸家、例えばこの論考に登場する山本理顕は各大学で教鞭をふるい、名古屋造形大学の学長を務めたことのある建築家で著作もある。また、ほかにも建築家でいえば、安藤忠雄や隈研吾のみならず、丹下健三や磯崎新のほか藤森照信(建築史家)や千葉学など、挙げていけば切りがないほど著作には事欠かない。建築家は名文家であることがなぜかしら多い。建築と文章との間には、<構造>が重要であるという点で共通するものがあるのかもしれない。
それはさておき、そうした建築家ではなく、あえて上野千鶴子の考察を課題文としている点にこそ、この名古屋市立大の建築の出題はユニークだと捉えられる理由がある。つまり、建築は「ただ単に建築」なのではなく、個人住宅にせよ公共建築にせよ、人間や社会や文化と不可分の関係にあることを示そうとしている。それらに対する理解を強調しているように思われる。
さらにいえば、建築デザインを専攻し、突き詰めていくと、きわめて卑近な表現になるものの「東大の建築を出て、UCバークレーやMIT、ハーバード、コーネルの大学院に行って、安藤忠雄事務所への入所を目指す」といったような志向を戒めているような印象さえある。いわば「エリート建築家」のようなものを目指すのではなく、地に足ついた、深い人間理解を前提とした建築家を目指してほしいというようなメッセージのようにも当校は感じる。
確かに、数少ないながら当校代表講師が交流してきた建築家は、総じて(当然)優れたデザインセンスがあると同時に人間や社会に対する独特な嗅覚や理解を携えている。そうした意味で、名古屋市立大の建築の出題はとても真っ当なものとも感じる。
この大学の芸術工学部の小論文出題は、押しなべて「感性」を問う点でユニークな良問が多いように思われる。
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当校では、アドミッションポリシーを分析し、過去問以外で事前に取り組むべき対策問題を選定して提示するほか、時事課題論文については新聞記事から作問して用意するケースもあります。
参考)東大情報学環・お茶の水女子大・一橋大 院試過去問
例えば、東大情報学環(大学院修士課程)入試では、次のように出題される(2020年過去問)。
院試では課題文は与えられないことが一般的です。
以下はお茶の水女子大と一橋大の修士課程の過去問(2023年)。
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