横浜市立大学 国際教養学部A方式・B方式 2023年度[前期]一般選抜 小論文の概要と傾向
試験の概要
出題形式:
※大学HPで過去問公開
配点:200/500
時間:
出題の傾向
難易度:標準
※以下、青地はリンク
【ポイント】
2023年度(令和5年度)問題
課題文は平易であるものの、率直に言えば、当校講師にとっては非常に難しく感じた。
なぜなら、問1は60字、問2は150字、問3は300字、合計で510字と原稿用紙でいえば1枚ちょっとの少ない字数ではあるものの、60分という制限時間で正答を書き上げるには、次の二点で難儀したからである。
第一に、課題文は平易ではあるものの、論文というよりもエッセイに近いため、「ニュアンス」を汲み取りながら、曖昧な表現を解答で補完せねばならなかったからである。つまり、エッセイのテイストが強い課題文をなるべく厳密に設問の意図に沿って答案として要約するのは、なかなか骨が折れる作業で、こうした柔らかい文章に慣れておくことを勧めておきたい。
(この推奨は、小論文講師としていうよりも、むしろ雑誌に寄稿する際に硬軟双方のニュアンスで書き分ける経験を経てきた執筆者としての感覚のほうが強いかもしれない)
正答例
第二に、問3である。(C)「カッコいい」、(D)「ティッピング・ポイント」を必ず使用するよう設問で指示されている。(C)も(D)も採られた課題文中では定義は曖昧で、前後の文脈から例えば(D)は「ポイント・オブ・ノー・リターンpoint of no returnに近いニュアンスの語だろう」と推察しながら正答例を書いた。
マスコミの入社試験では、一見関係のない単語が三つ示され、それらを組み合わせて、一つの短い話として書く、いわゆる「三題噺」が出題される。そうした入社選考作文も60分ほどで、発想力、瞬発力、文章力を試すマスコミ試験の定番ではあるが、それに近いことを横浜市大の国際教養学部は求めているように感じた。
社会科学のみならず人文科学、つまり文学作品や文芸などにも親しんできた「知性」を問おうとする出題意図が垣間見られる。
そもそも、横浜市大国際教養学部の正答例を書こうと思った理由は、出題意図のみならず、受験生へのメッセージというものを公開しており、その内容に着目したからであった。
受験志望者はすでに目を通しているとは思うものの、改めてここで紹介しておこう。
出題意図にも「理屈ではなく気分で考える」アプローチを柔軟な発想で表現できる能力を問う設問と明示されている。論理性を追求しているわけではない課題文抜粋を採用する点で、看護大学の設問に近い印象もあった。それは短い時間で手際よくコンパクトに要約したり、意見記述を求める点でも共通しているからである。
正答例の(2)では、課題文中に記述はないものの、医療技術や生命工学というタームを盛り込んだ。これは科学社会学という学問領域がある点を意識した記述である。科学と社会との関係を問われた際に決して外すことのできない重要なテーマだからである。
出題意図に示された点で重要なのは(3)である。自分自身の問題関心に引きつけて、論じることを求めている。これは大学入学後にレポートなり卒論なりで常に問われることである(入学後にこのフレーズを何遍も聞くことになるでしょう)。大学入試小論文においても、採点者である大学教員はいかに《自分自身の問題関心に引きつけながら、論じること》ができるかをみているということが出題意図からよくわかる。
参照:「科学社会学」(松本三和夫【編】東大出版会)
参照:「科学が作られているとき―人類学的考察」(ブルーノ・ラトゥール (著))
大学による受験生へのメッセージ
さて、大学が示した《受験生へのメッセージ》である。きわめて重要な点が提示されている。それは次の三点である。
①知の土台
小論文試験は現代国語の試験とは異なるという点を、わざわざ明示しているというのは、高校生なりの「知の土台」を用意しておくようにという大学からのメッセージである。これを小論文対策に活かさない手はない。つまり、それが評価の対象だということである。
②問題意識
問題意識に言及している。問題意識は小論文試験でも最初に示す必要がある。
小論文の書き方で詳述しているので、ぜひ左記リンクから参照しておいてほしい。
③読書経験と対自化(客観視)、文章の厚み
さすが大学教員の先生による受験生へのメッセージで、「その厚みは確実に文章ににじみ出ます」という一節を紹介したいがために、正答例を作り、ここまで説明を続けてきたともいえる。
たとえ、小論文試験の答案であっても、文章を書くという行為は非常に内省的で自己を顧みる行為だという、その重要性をぜひ紹介しておきたかった。合格する、受かるために試験場において60分という短い時間との勝負をしながら必死に答案を書くことでさえも、内省的なのである。つまり、試験中に他の誰かと会話をしながら答案は書かない(もちろん小論文対策をしている準備期間中にも周りの人とお喋りしながら答案を書くことはできないはずである)。課題文や設問意図と格闘し、自らと対話するように文章というものは綴らざるを得ないというのが、長い期間に渡って様々な形式や形態の文章に携わってきた実感でもある。
それはマニュアルやテキストである程度は伝えることができる一方で、具体的な提出答案に対する赤字添削で伝える、レクチャーを受けるのがもっとも効果的であることを最後に記しておきたいと思います。
- 問題意識・問題提示 ~人間や社会にとってなにが重要なのかを示す
- 観察(の記述) ~具体的事例を上げたうえで、それについて説明する
- 分析 ~その事例はどのような特徴があるのか(どのような特徴があると導き出せるのか)
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具体的な対策問題
過去問以外に、どのような問題に取り組むことが小論文対策になるかわからないといった相談の声が寄せられることがあります。
当校では、アドミッションポリシーを分析し、過去問以外で事前に取り組むべき対策問題を選定して提示するほか、時事課題論文については新聞記事から作問して用意するケースもあります。
参考)東大情報学環・お茶の水女子大・一橋大 院試過去問
例えば、東大情報学環(大学院修士課程)入試では、次のように出題される(2020年過去問)。
院試では課題文は与えられないことが一般的です。
以下はお茶の水女子大と一橋大の修士課程の過去問(2023年)。
※1 受講生には繰り返ししつこく伝えてきたところではあるが、本試験では当校なりが臨席したうえで隣で答案執筆の介助や補助線を引くことはもちろんできない。サッカー選手のように、ピッチ上に出場した選手としてドリブル、パス、ポジショニングの自己判断を下しながらそれらを一人で行い、局面を打開せねばならない。本解説も「受験生の多くが知りたい、手っ取り早い正答例や正答パターン」を示せば、当然それに引きずられて各位が答案執筆をすることになるため、極力避けるよう配慮したいと考えている。文章を書くという行為自体がきわめて内省的な営為だからである
※2 また、参考までに付言しておけば、国公立・私立を問わず、また志望校の難易を問わず、上記の他大学出題解説は役に立つものなので、閲読しておいてください(×「国公立だから関係ないや」「私立だから見なくていいか」)
※3 答案を執筆した際は、出題分析の質の高さが担保された添削講評を受ければ、いわゆる「書きっぱなし」にならずに済むため、当校ほかで提供している「単発添削」や「講座受講」を活用することを勧めておきます
※4 なお、当校講師は社会情報学、メディア研究で博士課程で修学した経験や私立大学で「情報社会論」の講師を務めた経験があるため、東大情報学環(大学院修士課程)入試や社会科学系大学院修士課程入試の論文指導も可能です
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