青山学院大教育人間科学部心理学科 2023年度 一般選抜 小論文試験【解説】

青山学院大教育人間科学部心理学科 2023年度 一般選抜 小論文試験【解説】
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青山学院大教育人間科学部心理学科 一般選抜 小論文解説

目次

出題傾向

大問が二つ出題されている。

一つは、パズルや寓話、哲学的な抽象度の高い文章などが採られている。きわめてユニークでバラエティに富んだ課題文が採用されている点から、受験生は読んでおくべき文章群のテーマを特定しづらいため、対策しにくいと感じるかもしれない。つまり、出題者はいわば的を絞らせないよう工夫を凝らしているとも捉えることができるだろう。

もう一つは、社会的な統計資料が出題されている。読み解くことが困難といった資料ではなく、オーソドックスな統計資料であることから、こちらは対策を講じやすいと見立てられるだろう。

ポイントは、90分という制限時間のなかで、これら二つの趣向の異なる大問を迅速かつ的確に処理することである。例えるならば、日本語の文章を読んだあとに、英文の読解、答案作成を続けざまに行うような感覚が求められている。

つまり、いわば「頭の切り替え」が必要となる出題形式が採られている。抽象的にいえば、思考の柔軟性、わかりやすくいえば「頭のやわらかさ」のある受験生を小論文試験を通じて求めている印象がある。

出題形式をスポーツに例えれば、大問Ⅰは「攻め」、大問Ⅱは「守り」のタームと受験生は解いている際に感じることだろう。

文系小論文基本講座

2024年度試験出題

2024年度試験においても、大問Ⅰは「2015年シンガポール&アジア数学オリンピック(SAMPO)」からジャンケンを通じた数理パズル、大問Ⅱが消費者庁「令和3年度消費者意識基本調査―SDGsやエシカル消費に関する興味や取り組み状況」が出問されたことから、大問2問の出題形式に変更はなかった。

合格者速報(2024年度大学入試)

2023年度問題(一般選抜)解説

大問Ⅰで決して外すことのできない重要なポイントは、パズルの論理形式を理解し、その論理性を記述・表現する能力が問われると同時に、こうしたパズルを通じて《他者理解はどのように可能か》を示すことにある。ちなみに赤本はまったくそれを見通すことができていない。

それは出典を見ればわかる。

おそらく作問者自身の入不二教授が考案したパズル(文章1)は、ラカンによる「囚人のジレンマ」(ゲーム理論できわめて著名)のような寓話的例示(過去の寓話的課題文もこうした流れのなかに位置づけられるのかもしれない)からインスパイアされて考案したのではないかと思われる。ちなみに「トロッコ問題」も心理実験、思考実験としてよく知られる。ラカンは、現代を代表する哲学者、精神科医、精神分析医である。
(青山学院大学サイト「哲学の練習をしよう」

それらのパズル、寓話的例示の含意赤本に書かれているようなことでは決してなく、可視化されていない他者への想像力をどのように働かせるのか、駆動させるのか、つまり他者理解はいかにして可能なのかを問うているのである。それこそが現代社会においてもっとも困難に直面している課題であることを、おそらく入不二教授は見抜いているがゆえにこうした出題を行ったのではないかと思われる。もちろん本人にインタビューしたわけではないため、それこそ他者への想像力で自己と他者の間に横たわる非対称性を架橋する試みといえる。

作問者が哲学を専門とする入不二教授が想定される以上、哲学的なテーマに通じておいて損はないだろう。

さて他方、大問Ⅱについては、上述の大問Ⅰとは対照的(△これは対称的よりも対照的のほうがいい)にごく短く、一言で講評すれば、
図表の特徴を予め3つか2つ、読み取り、抽出したうえで、答案を書くこと
とにかく冗長、無駄な表現を減らし、その3つか2つかの特徴を端的に記していくこと
がなにより重要である。

当校からの受験アドバイス

大問Ⅰは、他大学の小論文入試問題から類題を探すことに苦労するはずで、過去問にあたることが対策となる。

繰り返せば、作問者に哲学を専門とする青山学院大学教育人間科学部の入不二教授が想定される以上、哲学的なテーマに触れておいて損はないはずだ。入不二基義教授は、著書『問いを問う―哲学入門講義』(ちくま新書)の中で、自身の論考が2018年度の東北大学前期日程試験国語第一問で出題され、それに対する各予備校による解答例を解説し、論評するというひじょうにユニークな取り組みをおこなっている(「国語入試問題と哲学の交錯」)。駿台予備学校英語科講師から山口大学助教授を経て現職に至っているという経歴を存分に生かしている。

赤本には、入不二教授の作問想定を見通すような言及は(もちろん)なされていない。しかし、こうしたユニークな出題を読み解く際には必要となる分析視点であることを強調しておきたい。上述の解説は、当校なりに出題意図を深く掘り下げ、読み込んだうえで示している。

大問Ⅱに関しては、高校の社会科教科書などに掲載されている社会統計資料を活用し、図表や資料の読み取りに「慣れる」ことを勧めておきたい。

青山学院大教育人間科学部心理学科 2023年度 一般選抜 小論文試験 大問Ⅱ資料読解メモ
当校受講生のなかで、「与えられた資料や図表をどのように読み取ればよいのかわからない」という疑問が寄せられることがあります。

その際は、実際のメモ書きを示すことで「なるほど、こうやって読み取ったうえで、答案として書けばいいのか」と納得し、腑に落ちた状態へ誘導することを意識しています。

小論文入門講座

  • 小論文に関する基本的な考え方や知識(①②③)
  • 各大学の入試小論文解説(④)
  • 正答例にくわえてWeb上での講義(⑤)
  • 当校受講生の合格者の声(⑥)

を以下のリンクからみることができます。

小論文の
書き方
紹介ページ

小論文対策
のポイント
紹介ページ

③学習時間・
方法・対策開始
紹介ページ

大学入試の
小論文解説
紹介ページ

正答例&
Web講義
紹介ページ

合格者の声
(当校受講生)
紹介ページ

基本講座|わかりやすく丁寧なレクチャー、質の高いオーダーメイド対策で合格へ

当校からのメッセージ

受講生には繰り返ししつこく伝えてきたところではありますが、本試験では当校なりが臨席したうえで隣で答案執筆の介助や補助線を引くことはもちろんできません。サッカー選手のように、ピッチ上に出場した選手としてドリブル、パス、ポジショニングの自己判断を下しながらそれらを一人で行い、局面を打開せねばならない。本解説も「受験生の多くが知りたい、手っ取り早い正答例や正答パターン」を示せば、当然それに引きずられて各位が答案執筆をすることになるため、極力避けるよう配慮したいと考えています。文章を書くという行為自体がきわめて内省的な営為だからです

また、参考までに付言しておけば、国公立・私立を問わず、また志望校の難易を問わず、上記の他大学出題解説は役に立つものなので、閲読しておいてください(×「国公立だから関係ないや」「私立だから見なくていいか」)

答案を執筆した際は、出題分析の質の高さが担保された添削講評を受ければ、いわゆる「書きっぱなし」にならずに済むため、当校ほかで提供している「単発添削」や「講座受講」を活用することを勧めておきます

なお、当校講師は社会情報学、メディア研究で博士課程で修学した経験や私立大学で「情報社会論」の講師を務めた経験があるため、東大情報学環(大学院修士課程)入試社会科学系大学院修士課程入試の論文指導も可能です

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※各学類・コースに対応
※学校推薦型選抜&一般選抜
※1・2・3・4カ月コース

※各講座・コースとも受講人数に限りがあるため、お申し込み先着順となりますこと予めご了承ください

具体的な対策問題

過去問以外に、どのような問題に取り組むことが小論文対策になるかわからないといった相談の声が寄せられることがあります。
当校では、アドミッションポリシーを分析し、過去問以外で事前に取り組むべき対策問題を選定して提示するほか、時事課題論文については新聞記事から作問して用意するケースもあります。

参考)東大情報学環・お茶の水女子大・一橋大 院試過去問

例えば、東大情報学環(大学院修士課程)入試では、次のように出題される(2020年過去問)。
院試では課題文は与えられないことが一般的です。

以下はお茶の水女子大と一橋大の修士課程の過去問(2023年)。

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