青山学院大学総合文化政策学部 A方式《総合問題》・B方式《論述》【小論文解説】

青山学院大学総合文化政策学部 A方式総合問題・B方式論述【小論文解説】
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青山学院大学総合文化政策学部 A方式《総合問題》・B方式《論述》【解説】

早稲田大学院博士課程出身講師がレクチャー
多数の作文・小論文・大学生レポートを採点。雑誌寄稿、論文執筆の経験

2024年度問題(A方式総合問題)

出典:右崎正博,2022,『表現の自由の現代的展開』日本評論社

出典に関する理解

 出典をみれば日本評論社から刊行された著作であることが示されている。この時点で高校生には馴染みがないだろう。学術出版社からの刊行物が課題文として採られていることが、この総合問題の大きな特徴である。2023年度は東京大学出版会、2022年度はミネルヴァ書房であった。

 つまり、学術出版社という文字通り学術的な出版物を発行する出版社の刊した論考が課題文に採られる。学術出版は、一般向けに書かれたものではない。基本的にその学問領域の専門家向けに書かれている。したがって、発行部数は少なく、文芸書や漫画のように人口に膾炙する刊行物ではない。受験者はまずこの点をしっかりと理解しておく必要がある。

青山学院大学各学部出題解説 ※画像クリックで該当リンクへ

【青山学院大学総合文化政策学部】2024年度 B方式《論述》【正答例・詳細解説】
【青山学院大学総合文化政策学部】 A方式《総合問題》・B方式《論述》【概略説明】
【青山学院大教育人間科学部心理学科】2023年度 一般選抜 小論文試験【解説】
【青山学院大学地球社会共生学部】2020年度 一般選抜 【正答例・小論文解説】

設問

 問2ルソーカント問12ではマクルーハンリップマンブーアステインボードリヤール問16ニーチェハイデガーキルケゴールベクルソンが選択肢設問に登場する。豪華ラインナップというより、例えるならば問216人文社会科学のスーパースター問12メディア論のスターが並んでいる。

 周知の通り、同じ2024年度のB方式論述では、ベルクソンが課題文に採られている。アンリ・ベルクソンの原典を日本語でさえも読んだことのある受験者、いや高校生全体に広げたとしてもきわめて少ないだろう。事実上、ほとんどいないといっていいだろう。そうした論者がB方式論述では取り上げられる。過去の出題をみても人文社会科学のスーパースター、いわば偉人たちの日本語原典が出題されてしまう。

青学総文B方式《論述》専科専科
オリジナルテキスト表紙
テキスト抜粋(詳細解説28頁+資料37頁)

合格者の声 ※画像クリックで該当ページへ

明治大学経営学部2024年度[学校推薦型選抜]指定校推薦入試[合格者の声]
「書く事が苦手で、いつもとても苦戦していましたが、ご指導頂いた事は大学生活でも力になると思います」
「『私よりも私のことを一生懸命考えてくれてるんだから、受からなきゃね』と」
日比谷高校出身|総合的な学力でお茶の水小論文を“武器”に早稲田教育・慶応文にも合格!
「試験会場で周りの受験生を見た際に私のように赤字が入ったたくさんの添削を見直している人はいませんでした!」

対策(A方式総合問題・B方式論述)

それは対策なのか?

 とある総合型選抜専門を謳う塾のサイトをみた際に、「日ごろからハイデガーサルトルなど古典や原典にふれておくことを勧める」などと笑止千万な対策が述べられていたように思う。一体どこにハイデガーやサルトルの原典を読む、あるいは読みこなす高校生がいるというのか。当校代表講師は、フーコードゥルーズは読んだことがあっても、残念ながら特にサルトルは読んだことがない。ルソー『人間不平等起源論』の翻訳を講談社学術文庫から発行した哲学者から教育哲学は学んだが、ルソーの原著と格闘したことはない。

重要な対策とは?

 長くなったが、A方式総合問題B方式論述、双方とも対策として重要なのは、その塾サイトがいう古典や原典に直接あたり続け、格闘することでは決してないだろう。初学者に肝要なのは、確かな論者による人文社会科学の重要論者にまつわる解題に目を通すことである。具体的には新書ということになる。宣伝で恐縮ながら、当校が刊行するPDF書籍『小論文入門』も新書ほどの文字量と内容であるため、青山学院大学総合文化政策学部の対策として好適と出題をみたあとに感じる次第である。

 また、当校受講生には、青山学院大学総合文化政策学部の対策本としてまさにぴったりと思える文化にまつわる新書を詳細に解説した授業動画も用意している。高校教科書を一歩か半歩超えたところにこの学部の総合問題・論述対策の要諦がある。

青山学院大学総合文化政策学部の受験対策には外せない当校映像授業

文化、社会、メディア_講義スライド(1)
文化、社会、メディア_講義スライド(2)
文化、社会、メディア_講義スライド(3)
文化、社会、メディア_講義スライド(4)
早稲田大学院博士課程出身講師による講義

受験対策の難しさ

 例えば、問12は一言でいえば、メディア論の重要論者である。大学で学ぶメディア論あるいは社会学のうち情報社会やメディアをテーマとするあらゆる入門書に登場する。当校代表講師が、都内近郊私立大学で情報社会論を教えた際も、マクルーハンリップマンブーアステインボードリヤールのいずれも決して外すことのできない論者としてシラバスにさえ盛り込んだ。

 情報社会論メディア論においては、いわば「知っているのは当たり前」である一方、仮にB方式《論述》で出題されれば、受験生はこうした論者の論考をどのように自分自身の体験や問題関心に引き寄せて論じるかが問われる。とはいえ、高校生で例えばこの4人を「知っている」「聞いたことがある」という人の割合は少ないだろう。そこに受験対策の難しさがある。

~高校生がマスメディア・メディア、ニュース・報道に関する理解をさらに深めるために~

当校代表講師による論文

【参考】米国のNPOニュースメディア組織Texas Tribuneによる報道の分析―テキサスでの大型台風被害をめぐる2016年の「Hell and High Water」報道を事例として―

https://bit.ly/3MO7P9C
日本マス・コミュニケーション学会・2019年度秋季研究発表会・予稿

良問

 繰り返せば、一朝一日にそうした知識を得ることはほとんど不可能であろう。高校社会科教科書全般ともいえるものの、学習方法が定式化されているとはいえないこの総合問題・論述のために時間や手間をかけて、着実に人文社会科学に関する入門編の知識や重要論者、キー概念を身につけていくほかない。そうした意味では、多くの高校生にとってどう対策すればよいのかわからないだろう一方で、青山学院大学総合文化政策学部はこれ以上ない良問を出題しているとも当校は感じる。

選択肢問題

 A方式総合問題は、設問のほとんどを選択肢とすることで他教科との相違を低減させようという出題側の配慮も感じられる(採点の効率化もあるだろうとはいえ)。要するに、「どれが『正解』か」を明瞭にすることで、「いかようにも、どのようにも論じられる」といった出題を避ける出題意図も感じられる。

 あわせて、大学が示すように高校教科書のなかで日本史、世界史のとりわけ近現代以降、また現代社会、倫理、政治・経済によく目を通しておくことも重要である。例えば、日本史選択だったとしても「冷戦構造」と言われて何のことを言っているのかわからないという人は合格が難しい。高校社会科全般に関する知識習得や学問的関心も視野に入れた出題がなされている点で、繰り返せば良問である。

2024年度問題(B方式論述)

 まさか大学入試小論文でベルクソンを紹介するとは正直言って思っていなかったが、出題されたからには紹介せざるをえないだろう。

アンリ・ベルクソンBergson, Henri 1859~1941

ベルクソンは,フランス20世紀初期の代表的な哲学者であり,19世紀から独仏で展開された「生の哲学」の主要な人物である。その著作には,『時間と自由』『物質と記憶』『創造的進化』などがあり,「持続」と術語化される時間の実在と,空間に対するその優位を主張した。端整なフランス語が評価されノーベル賞も受けている。だが、社会学との関連では、『道徳と宗教の二源泉』という最後の大作が重要である。そこでベルクソンは,生の哲学の議論を、はじめて社会や道徳(倫理)という事象に直接むすびつけていく。「開いた社会」と「閉じた社会」によって示される議論は、時間と空間との対比とパラレルである。だがベルクソンは「開いた社会」=「人類」の社会の領域を,神秘的な特権的宗教者によって可能になるものと描きつつも、「閉じた社会」における「仮構作用」による社会性(「本能」や「民族」の領域)を軽視するわけではない。また最終章における神秘主義と機械主義との接合は、たんなる20世紀の機械文明の批判ではなく,そこでの技術の力に,過去の宗教者たちとは異質な「開いた社会」の可能性をみてもいる。また国際連盟の特派使節などもつとめ,国際政治上でも活躍した。

『現代社会学事典』(弘文堂)

対策

 ただし、これを読んでいる受験予定者の高校生・既卒生に勘違いしてほしくないのは、ベルクソンについて事前にある程度、知っておく必要があるかといえば、当校はなくとも構わないと考える。むしろ、ベルクソンの課題文に採られたセクションのなかから、論考に対する是非を立論する際にほかの論者や概念を引っ張ってこられるかが合否をわけると思う。具体的には例えば、総合文化政策学部である以上、文化相対主義にまつわる立論などが可能だろう。

赤本正答例の陥穽

 参考までにふれておけば、赤本は序文でいきなり「私は」ではじめているとともに「私は考える」を第一段落、第三段落の最終文で用いている。課題文がなにせベルクソンであるゆえ、学部教授陣による採点でも瞬時にこれでマイナス点をつけるといった辛い採点はおそらくしていないだろうと推察するものの、もしこれが当校で答案として受講生から提出されれば、講座受講で最初に受けてもらう講義である《(小)論文とはそもそもなにか》《(小)論文のNG》を見直す必要をすぐさま受講生へ伝える。

 添削では大きく目立つ字で《赤字》を入れる。その理由は紙幅が限られているため、ここですべて説明できないが、論文や小論文で「私は」と序文に書かないという点だけは記しておこう。

文系小論文基本講座

2023年度(A方式総合問題)

 課題文は、カール・ポランニーウルリッヒ・ベックイヴァン・イリイチが登場する。正直にいえば「なかなかだな」と思わせる出題文だと思う。要するに高校生にとっては「ややヘビー」であると思う。また、例えば問6の選択肢にはコモンズ問9ではジョン・ロールズである。さらに問11では、ニーチェウェーバーデューイタゴールとスーパースターが居並ぶ。

 そして、社会科学の重要論者でばかりでなく現代社会の重要テーマとして例えば問13新自由主義に関して具体的な日米英の政治家(サッチャーレーガン中曽根)を選ばせるなど、いわば社会科学の「とば口」ともいえる基礎知識も問われている。

 例えば、社会科学系の大学院生であれば、設問文を読まずに、選択肢をみただけでこの三人をすぐに選ぶ一方、高校生にはさすがにそれを求められない。日本史、世界史、現代社会、倫理、政治・経済の教科書で得た知識を総動員しながら、正解を選び出すという戦略になるだろう。

2022年度(A方式総合問題)

 この年の出題設問は、日本史の知識が役立ったかもしれないが、アダム・スミスケインズフリードマン経済学のスーパースター、現代哲学の代表選手であるハーバーマスアーレントが登場する。また、レヴィナスなど社会科学のビッグネームに関する知識を問うている。大学はこれらの重要論者について、大学入学前に知っておいてほしい、あるいは知っておくべきだと明確なメッセージを発している。

B方式論述

年度論者著作
2024年度ベルクソン『道徳と宗教の二つの源泉』
2023年度福沢諭吉『現代語訳 文明之概略』
2022年度マキャベリ『君主論』
2021年度カント『啓蒙とは何か』
2020年度ホッブス『リヴァイアサン』
2019年度フロイト『幻想の未来/文化への不満』
2018年度ルソー『社会契約論』
2017年度ジョン・スチュアート・ミル『自由論』
2016年度プラトン『国家』
青山学院大学総合文化政策学部 B方式《論述》出題一覧

 日本広しといえど、人間の精神的活動を代表する《学問》という文化を作り上げたスーパースターら、つまり「偉人」をここまで重要視し、大学入試小論文で原典を取り上げている大学学部はほかにない。きわめてユニークな出題をおこなっている。

 繰り返せば、大学はこうした原典を読み漁り、古典に通暁している(通じている)ということはおそらく期待していないだろう。そうではなく、原著や古典のうち課題文に採られた部分について、読解しその場で理解できること、そして自身の問題関心に引きつけながら論じられるかをみている。

 しつこいが、マキャベリホッブスフロイトルソージョン・スチュアート・ミルプラトンの原典を数年間かけて読み通すようなことは、いわゆる受験対策として現実的ではない。高校生でも読める、理解すべき新書を有効利用し、確かな研究者による解題にこそ目を通しておくことが求められている。

小論文試験、面接について現職大学教員へ取材
(※画像クリックで該当ページへ)
  • インタビュー冒頭部分(約9分)
  • カフェでの取材だったため、周囲の音が入っていることを予め了解下さい

当校レクチャー

 こうした出題の対策を進めるにあたり、当校では早稲田博士課程出身の講師陣がその経験に基づきながら、合格に必要な論述に関する知識を講義で提供することができます。

 それとともに、小論文提出答案に対する大学教員水準の添削講評を通じて、実力向上のためのフィードバックを提示していきます。書けるようになるまでしつこく丁寧にレクチャーをおこなっていくことが当校講座の特徴です。

レクチャーの方針

 合格を達成すべき最大の目標に据え、それに向けて努力するのは当然としても、ただ単なる大学受験対策というよりも知的好奇心を満たしながらいかに大学水準の人文社会科学をある程度先取りした内容をレクチャーするかに注力することになります。博士課程出身者らによる学会発表、論文執筆の経験をふまえた実践的な指導をおこないます。

対応講座・コース ※受講申込受付中

基本講座|1・2・3・5カ月コース
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※1カ月コース

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動画解説(※画像クリックで遷移)

動画解説(約14分)
動画紹介(1分弱)

小論文の書き方

  • 小論文に関する基本的な考え方や知識(①②③)
  • 各大学の入試小論文解説(④)
  • 正答例にくわえてWeb上での講義(⑤)
  • 当校受講生の合格者の声(⑥)

を以下のリンクからみることができます。

小論文の
書き方
紹介ページ

小論文対策
のポイント
紹介ページ

③学習時間・
方法・対策開始
紹介ページ

大学入試の
小論文解説
紹介ページ

正答例&
Web講義
紹介ページ

合格者の声
(当校受講生)
紹介ページ

大学入試の小論文解説・正答例&Web講義

具体的な対策問題

過去問以外に、どのような問題に取り組むことが小論文対策になるかわからないといった相談の声が寄せられることがあります。
当校では、アドミッションポリシーを分析し、過去問以外で事前に取り組むべき対策問題を選定して提示するほか、時事課題論文については新聞記事から作問して用意するケースもあります。

参考)東大情報学環・お茶の水女子大・一橋大 院試過去問

例えば、東大情報学環(大学院修士課程)入試では、次のように出題される(2020年過去問)。
院試では課題文は与えられないことが一般的です。

以下はお茶の水女子大と一橋大の修士課程の過去問(2023年)。

※1 参考までに付言しておけば、国公立・私立を問わず、また志望校の難易を問わず、上記の他大学出題解説は役に立つものなので、閲読しておいてください(×「国立だから関係ないや」「私立だから見なくていいか」)
※答案を執筆した際は、出題分析の質の高さが担保された添削講評を受ければ、いわゆる書きっぱなしにならずに済むため、当校ほかで提供している「単発添削」や「講座受講」を活用することを勧めておきます

※2 なお、当校講師は社会情報学、メディア研究で博士課程で修学した経験や私立大学で「情報社会論」の講師を務めた経験があるため、東大情報学環(大学院修士課程)入試や社会科学系大学院修士課程入試の論文指導も可能です

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