福島大学 一般選抜 小論文の概要と分析
福島大学 人間発達文化学類 [前期]
【ポイント】
やや長い課題文の読解をさせたうえで、200字・400字などで要約・資料読取を記述し、600字などで意見主張をおこなう。課題文そのものは、新書・新聞記事ほか内容、文章とも読解に苦しむような水準ではなく、標準的なものです。やや長い引用としているため、120分という時間設定としているように思われます。
ポイントは、いずれの課題文も専攻に応じて、教育に関連した内容だという点にあります。
例えば、令和5年度の苫野一徳は、早稲田大学教育学研究科で博士号を取得したのち(師は竹田青嗣など)、熊本大学で教鞭をとる研究者で、多くの新書などを刊行しています。また、ブレイディみかこは、英国在住で保育士の資格を活かしたコラムなどで著名です。こうした人口に膾炙した論者ばかりでなく、教育哲学、教育心理学、発達心理学、教育社会学など入学後に学修する教育にまつわる学問領域に関して、新書レベルで構わないので、通読しておけば、背景知識のみならず答案執筆にも役立つでしょう。
- 問題意識・問題提示 ~人間や社会にとってなにが重要なのかを示す
- 観察(の記述) ~具体的事例を上げたうえで、それについて説明する
- 分析 ~その事例はどのような特徴があるのか(どのような特徴があると導き出せるのか)
- 考察 ~①・②・③をふまえ、さらに鋭く結論としてまとめる
福島大学 人間発達文化学類 [後期]
【ポイント】
1200字程度の論述です。
公開されている出題意図が受験生の小論文対策としてたいへん参考になります。
出題意図
「人間発達文化学類では, 生涯にわたる発達への支援や, 人間の発達を支える社会・文化への支援を通じて、 学校はもちろんのこと、行政や企業, 地域社会で活躍することを目指す意欲を持ち、 卒業までに次の4つの力を身に付けたいと考える学生を受け入れます」
キーワードは「社会・文化への支援」で、つまり社会や文化にまつわる課題文が基本的に採られることを出題意図は示しています。また、課題文のテーマについて社会的、文化的に論じることが求められている点もわかります。さらに、「学校はもちろんのこと、行政や企業, 地域社会で活躍する」と示されている通り、現代社会の事象や現象を論じるにあたり、アクターは複雑であり、さまざまな立場から利益(interest)や便益が追求されることをふまえ、複層的にテーマを論じる必要がある点も明示しています。そうした点は以下の②や③とも連接しています。
出題意図
①人間の発達を支援する教育および文化についての専門知識や技術を習得し活用する力
②現代的課題や地域的課題への問題意識をもち、個々の事象を複数の観点から捉える力
③人や文化の多様性を理解し, 共感的態度をもって価値観や考え方の違いを超えた関係を築く力
④学問固有の問いの立て方、ものの見方・考え方を身に付け、それらを活用しつつ社会の改善に向けて探究し表現する力
そして、重要なのは④です。「学問固有の問いの立て方、ものの見方・考え方」を重視していることが謳われている。この「学問固有の問いの立て方、ものの見方・考え方」は、当校のオンライン講義で高校生向けにわかりやすく提示するようにしています。その一部は以下で頒布しているので参考にしてほしい。
結局、④を理解していなければ、課題文・資料の読解も、答案小論文の執筆も要領を得ないものになる点を大学側が示しているのは、きわめて重要なメッセージとして捉えられます。
行政政策学類[前期]
【ポイント】
1200字程度の論述です。
過去3年間の出題テーマは、差別問題、ファシズム、公共施設をめぐるコンフリクトでした。
こうした具象(具体的な事象や現象)、つまり現実的な事柄である一方で、社会規範(社会にとっての公正性平等性)や民主主義(全体主義とはなにが異なるのか)、シチズンシップ(市民、国家、地域共同体、経済との関係性)など抽象としても論じられる能力を問う良問です。
また、公開されている出題意図(令和5年度)に次のように示されている。
出題意図
「『予断を持たずに他者の主張を丁寧に把握する』という、社会の様々な資料や事象を読み解き、説明する際に不可欠な基本的学習態度を問うことも意図している」
とある通り、「予断を持たずに他者の主張を丁寧に把握する」ことは、社会科学に求められる姿勢そのものです。自己の考え方や価値観のみならず教育環境、出身地域、親の職業など社会的、文化的な背景を「所与の暗黙の前提」とすることを避けねばならない。高校生の苦手とする知的作業です。
社会規範、民主主義、シチズンシップについては、以下のWeb講義を参考にしてほしい。
行政政策学類[後期]
【ポイント】
1200字程度の論述です。
令和5年度に出題された2つの資料のうち、一つは藤代裕之によるものでした。藤代は徳島新聞やNTTに勤務経験のあるメディア研究者でその取り組みは理論研究ではなく、実学的な方向に振られています。また、令和4年度に課題文として採用されたのは、堀川三郎が岩波書店刊行の雑誌『世界』へ寄稿した論考でした。つまり、後期試験についても、現実(具体)と理論(抽象)の双方を行き来できるような論理的思考力を問うている点が前期試験と共通しています(また、いわゆる「リベラルさ」も出題背景に垣間見られます)。
公開されている出題意図、特に令和3年度に示されたことが受験生の小論文対策としてたいへん参考になります。
出題意図
「地域社会の課題を重層的に理解したうえで、真に有効な対策を組み立てていくことが求められる」
とある通り、事象や現象について《重層的に》《複層的に》論じることが要求されています。還元論(いわゆる単独犯説の支持)に陥らず、複合的に社会現象・事象を論じれば、高得点が期待できます。
前期試験で問われた社会規範、民主主義、シチズンシップについては、以下のWeb講義を参考にしてほしい。
経済経営学類[前期]
【ポイント】
1200字程度の論述です。
きわめてオーソドックスな課題文、設問です。
特に令和4年度の出題で問われた相関関係と因果関係については、以下の中央大学 国際経営学部の出題(https://kuberu-ac.com/chuo-gm2023-02/)でも問われた通り、二項の関係性を論じる際にひじょうに重要な視角、視点です。
また、そうした二項関係を論じさせる類題を受講生が解いた際に、本質主義的なものの見方、捉え方が提出答案に多くみられます。そうした姿勢は大学教員がひじょうに嫌うものであり、二項の関係を単純視しすぐさま因果関係とみなす、いわば「癖」のついた受験生は、1ヵ月といったスパンでは矯正が難しいため、早めに小論文対策準備を開始することを勧めておきます。
他学類で問われた社会規範、民主主義、シチズンシップについては、以下のWeb講義を参考にしてほしい。
経済経営学類[後期]
【ポイント】
1000字超を90分で書くオーソドックスな出題です。
取り上げられたテーマは、行動経済学におけるナッジ、DX(デジタルトランスフォーメーション)、地域と災害など、社会的に注目の集まる事象や現象が多いようです。
ナッジについては、キャス・サンスティーンの著書が選ばれている。彼は、ハーバード大学ロースクール教授で憲法学、行政法、環境法が専門である一方、『インターネットは民主主義の敵か』『#リパブリック: インターネットは民主主義になにをもたらすのか』などデジタル時代における民主主義に関する論考が著名であり、大学入試小論文で出題される可能性の高い論者の一人です。
ナッジ、AI、地域災害といったテーマで「あなたの考えを述べよ」と出題されると、「私の経験や体験」に基づいて答案を書く誘惑にかられるかもしれません。特にナッジの出題では「あなたの経験や知見」と設問に指示されているため、なおさらです。
しかし、あくまでも論文形式で書かねばならない。つまり、作文ではないことに留意する必要があります。
他学類で問われた社会規範、民主主義、シチズンシップについては、以下のWeb講義を参考にしてほしい。
人工知能と人間社会
今日、AIの著しい技術的進展がみられ、人工知能と社会の関係は現代の焦眉とも捉えられます。そうした状況について大学入試小論文で問われる可能性があるため、以下の当校講師による将棋棋士・佐藤天彦九段へのインタビューを参考までに貼り付けておきます。
将棋という限られたルールに基づくゲームは、チェスや囲碁に続いて、人間よりもAIソフトのほうが「強い」という事態を迎えました。そうした状況の中で「人間らしさ」とはなにか、人工知能と社会との関わりに対する示唆に富んだ内容です。
合格者の声
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- インタビュー冒頭部分(約9分)
- カフェでの取材だったため、周囲の音が入っていることを予め了解下さい
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小論文の書き方
- 小論文に関する基本的な考え方や知識(①②③)
- 各大学の入試小論文解説(④)
- 正答例にくわえてWeb上での講義(⑤)
- 当校受講生の合格者の声(⑥)
を以下のリンクからみることができます。
具体的な対策問題
過去問以外に、どのような問題に取り組むことが小論文対策になるかわからないといった相談の声が寄せられることがあります。
当校では、アドミッションポリシーを分析し、過去問以外で事前に取り組むべき対策問題を選定して提示するほか、時事課題論文については新聞記事から作問して用意するケースもあります。
参考)東大情報学環・お茶の水女子大・一橋大 院試過去問
例えば、東大情報学環(大学院修士課程)入試では、次のように出題される(2020年過去問)。
院試では課題文は与えられないことが一般的です。
以下はお茶の水女子大と一橋大の修士課程の過去問(2023年)。
受験生へのアドバイス
※1 受講生には繰り返ししつこく伝えてきたところではあるが、本試験では当校なりが臨席したうえで隣で答案執筆の介助や補助線を引くことはもちろんできない。サッカー選手のように、ピッチ上に出場した選手としてドリブル、パス、ポジショニングの自己判断を下しながらそれらを一人で行い、局面を打開せねばならない。本解説も「受験生の多くが知りたい、手っ取り早い正答例や正答パターン」を示せば、当然それに引きずられて各位が答案執筆をすることになるため、極力避けるよう配慮したいと考えている。文章を書くという行為自体がきわめて内省的な営為だからである
※2 また、参考までに付言しておけば、国公立・私立を問わず、また志望校の難易を問わず、上記の他大学出題解説は役に立つものなので、閲読しておいてください(×「国公立だから関係ないや」「私立だから見なくていいか」)
※3 答案を執筆した際は、出題分析の質の高さが担保された添削講評を受ければ、いわゆる「書きっぱなし」にならずに済むため、当校ほかで提供している「単発添削」や「講座受講」を活用することを勧めておきます
※4 なお、当校講師は社会情報学、メディア研究で博士課程で修学した経験や私立大学で「情報社会論」の講師を務めた経験があるため、東大情報学環(大学院修士課程)入試や社会科学系大学院修士課程入試の論文指導も可能です
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