宮崎県立看護大学 一般選抜[前期][後期] 小論文の概要と傾向
小論文試験は、
①高校で「小論文」といった授業科目が設定されておらず、
②また、「小論文」という高校教科書があるのでもなく、
③高校で「小論文の書き方」を教わった経験のない人も多い、
④そして、正答例を「なんとなく『眺める』」だけで、実力が自ずと向上するわけでもない
いわば「ないない尽くし」のなかで学習を進める対策が難しい科目です。
本番の試験で着実に高得点を取るには、
①論文とはそもそも何か
②論文のルール、作法、構造とはいかなるものか
③論理的思考力、表現力、読解力をどのように培うか
④図表読み取り問題で問われる《情報の取り出し》《解釈》《評価》
について理解したうえで、的確に対策と実践演習を進める必要があります。
合格者の声(2025年度大学入試)
試験の概要
出題形式:
配点:200
時間:90分
一般選抜(前期・後期日程)、学校推薦型選抜(一般推薦・地域推薦)、社会人選抜のすべてで小論文と面接が選考に設定されている。「小論文では、読解力、思考力、判断力及び表現力を評価」する旨が大学によって示されている。三つの能力と素養を重視していることがわかる。
出題の傾向
難易度:標準
※以下、青地はリンク
【概略】
課題文は、論文というよりも平易な新聞記事やエッセイ、論考から採られている。読解すべき文章量はそれほど多くなく、内容も平易であるため、合計1000字弱を答案として書くにせよ、90分という時間設定は十分な余裕がある。具体的には次のような問題が直近で出題されている。
令和5年度 一般選抜[前期]
桝野俊明『比べず、とらわれず、生きる』
令和5年度 一般選抜[後期]
筑紫哲也『若き友人たちへ』
令和4年度 一般選抜[前期]
齋藤孝『読書する人だけがたどり着ける場所』
令和4年度 一般選抜[後期]
柏木恵子『子どもが育つ条件-家族心理学から考える』
令和3年度 一般選抜[前期]
好井裕明『「今、ここ」から考える社会学』
令和3年度 一般選抜[後期]
伊藤一彦『聴く力 話す力 書く力』
筑紫哲也や好井裕明から採られた文章からわかる通り、現代社会とメディア/メディアコミュニケーションに対する受験者の意見論述に大学側は関心があるようだ。これは端的に言って、もはや「当たり前」となったスマートフォンの所有やSNSを介したメディアコミュニケーションを問い直す視点を受験者である高校生に持ってほしいという大学のメッセージとして捉えられる。
そして、宮崎県立看護大学に限らず、なぜ多くの大学入試小論文で現代におけるメディア環境が問われるかといえば、それが人間の知の在り方や在りように大きな影響を及ぼしているからにほかならない。
(大学入試小論文の頻出テーマであることは間違いないが、例えば2020年度の神戸大学法学部で出題された《ビッグデータによる予測の活用の効用と脅威》に関する論考に対しては国内トップクラスともいえるだろう答案力が求められる。また、2023年度の横浜国立大学 都市科学部 環境リスク学科[前期]一般選抜では《人工知能と情報社会》という現代の焦点ともいえそうなテーマが出題されている)
問いは、概ね三問から構成されている。
①200字ほどで本文を要約
②300字ほどで課題文の重要箇所に設けられた下線部に関する説明記述
③400字ほどで自身の体験や具体例に基づきながら意見論述
そして、宮崎県立看護大学の出題に関する最大の特徴は、③の「自身の体験や具体例」を記述させる点にある。論文形式は、散文形式と異なる。散文とは、作文、読書感想文、エッセイ、随筆、コラムなどである(「小論文の書き方」小論文と作文の違いを参照のこと)。「自身の体験や具体例」ということは、文字通りほかでもない自身の体験や具体例であるわけだから、「私は」「私の」などと書かざるを得ない。また、「私は」「私の」と書かなければ、基本的に「私の体験や具体例」にならない(作家であれば、その文章技術で「私は」と書かずに記述を進めることもできるが、それは看護師と同様に高度な職業技能ということである。おいそれと専門家ではない一般人が作家の文章技法を体現することはもちろんできない)。
したがってポイントは、次の二点である。
対策【ポイント1】
平易な課題文である以上、要約に苦労することはないだろう。その一方で、小論文という試験科目である以上、あくまでも論文形式で答案を書かねばならない。
端的に言えば、論文形式では次の構成をとることが求められる。着実に合格するために受験者は論文形式での意見論述の仕方を習得しておく必要がある。
《論文の「型」とは》
①問題意識・問題提示 ~人間や社会にとってなにが重要なのかを示す
②観察(の記述)~具体的事例を上げたうえで、それについて説明する
③分析 ~その事例はどのような特徴があるのか(どのような特徴があると導き出せるのか)
④考察 ~①・②・③をふまえ、さらに鋭く結論としてまとめる
※小論文の書き方を参照
他大学ながら、山口県に所在する周南公立大は過去問とともに詳しい問題講評を公開している(周南公立大 学校推薦選抜&総合型選抜&一般選抜【小論文解説】を参照のこと)。ここまで詳細な問題講評を大学側が開示することはきわめて稀であり、小論文の初歩的なNGポイント(当サイト参照)が紹介されているため非常に有用である。そこで次の三点のみ紹介しておこう。そのなかで、次のようなコメントが記載されている(大学による問題講評コメントの引用については、わかりやすくするため斜体にした)。
1.論文形式について
「私は」で書き始めない、文中で用いない
論文を作成する上で、採点者が読み取りやすい文字で書く(丁寧さ、濃さ、等)、誤字・脱字に注意する、文の始まりに「私は」を用いない、「~なのだ」といった断定的な表現を用いないなど、基本的な作成技法が身に付いていない受験生が多いように感じた。
これが論文形式のルール、作法、原則である。論文において「私は」と書かない。
しかし、宮崎県立看護大学の設問においては、「私は」と書かざるを得ない。つまり、それは答案が論文から散文に向かうことを意味している。大学はそれを出題で許可している。さまざまな意味合いがあるだろうものの、肯定的な側面からいえば、看護師という職業に就きたいという内的な動機(個人的動機)は非常に重要なものだからだといえるだろう。面接のみならず小論文を通じても受験者個人の内面を大学側は知っておきたいということだろう。一方で、否定的な側面をあえて挙げれば、論文形式にすると受験者のほとんどが難儀してしまうからかもしれない。
まとめれば、小論文と科目名は銘打っているが、むしろ受験者自身がどのような価値観や考え方を持っているのか、またその表現能力を大学側は知りたいと考えているように捉えられる。つまり、面接と小論文はセットメニューとして位置付けられていると推測される。
ただし、「私は」と書いてもよいと設問で設定されているからといって、(論理的な)読解力や思考力を測定すると大学が謳っている以上、《論文に近い散文》とする必要があるはずである。いわゆる作文では着実に合格することは難しいだろう。
2.意見論述と持論
「あなたの考えを述べよ」と「私の祖父母は○○を実践している、等」
図表読解の問題では与えられた情報からどこまで論理的に課題解決の方法を論じられるかが重要であるが、図表には全く示されていない根拠のない情報(テレビで見た、等)を用いて飛躍した持論を展開する解答(私の祖父母は○○を実践している、等)も散見された。
※《図表を含む資料読解問題》と《文章からのみ構成される論考や記述の読解問題》とは、基本的に変わらない。「見た目」が異なるので、別の「解き方や答え方のテクニックが必要」と勘違いする受験生がきわめて多い(兵庫県立大 看護学部 学校推薦選抜&[前期]一般選抜【小論文解説】を参照のこと)。
宮崎県立看護大学の設問では、「私の体験や具体例」に根差しながら、それを客観的に見つめることができる能力、そうした視点から記述できる表現力が求められる。
3.論文の型について
上述の①~④に対応している
全体を通して、図表に示されている客観的事実をただ説明しているだけの解答が多く、図表から重要な情報を読み取り、その情報がどのような社会情勢や人間の行動・心理を反映しているのかについて深く考察している解答が極めて少なかった。
つまり、宮崎県立看護大学の設問では、「私の体験や具体例」に根差すと同時に、俯瞰した視点からそれが社会や人間にとってどのような意味合いがあるのか、どのような特徴があるのか、どのような重要さがあるのかを記述せねばならない。そうした視点こそが、作文から小論文に近づける、いわばコツだといえる。
対策【ポイント2】
では、どのように答案小論文を書き進めればいいのか。小論文答案の作成手順は次の通りである。
《論文の「型」》
①問題意識・問題提示 ~人間や社会にとってなにが重要なのかを示す
②観察(の記述)~具体的事例を上げたうえで、それについて説明する
③分析 ~その事例はどのような特徴があるのか(どのような特徴があると導き出せるのか)
④考察 ~①・②・③をふまえ、さらに鋭く結論としてまとめる
講座受講者には当方へ提出された答案から具体的な記述に関して指摘を行っていくが、一言でいえば、「私の体験や具体例」は《論文の「型」》でいうところの《②観察(の記述)~具体的事例を上げたうえで、それについて説明する》に該当するのである。
つまり、「私の体験や具体例」を「私」に代わって、俯瞰した「私」が端的に紹介するわけである(自身の体験や具体例の要約)。例えばその答案記述事例として【神戸市看護大学】2023年度 小論文正答例(一般選抜・後期日程)の問題Ⅰ 設問2を紹介しておこう。非常に参考になるはずだ。
そのうえで、「私の体験や具体例」はどのような特徴があるのかを分析し、それを記述する
《③分析 ~その事例はどのような特徴があるのか(どのような特徴があると導き出せるのか)》。
そして、《④考察 ~①・②・③をふまえ、さらに鋭く結論としてまとめる》必要がある。
ということは、《①問題意識・問題提示 ~人間や社会にとってなにが重要なのかを示す》は、④と対応する呼応関係である必要もあったというわけである。
手順をわかりやすく示せばこのようになる。
周南公立大の親切で詳細な問題講評は大きな参考になるはずである(周南公立大 学校推薦選抜&総合型選抜&一般選抜【小論文解説】)。そして、具体的な答案小論文でそれを具現化、具体的に行っていく必要もある。
当校の基本講座では、論文形式による合格できる小論文答案の書き方を詳しく、そしてわかりやすくレクチャーします。
参照:宮崎県立看護大学「令和6年度宮崎県立看護大学一般選抜(前期・後期日程)出願状況」
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を以下のリンクからみることができます。
具体的な対策問題
過去問以外に、どのような問題に取り組むことが小論文対策になるかわからないといった相談の声が寄せられることがあります。
当校では、アドミッションポリシーを分析し、過去問以外で事前に取り組むべき対策問題を選定して提示するほか、時事課題論文については新聞記事から作問して用意するケースもあります。
参考)東大情報学環・お茶の水女子大・一橋大 院試過去問
例えば、東大情報学環(大学院修士課程)入試では、次のように出題される(2020年過去問)。
院試では課題文は与えられないことが一般的です。
以下はお茶の水女子大と一橋大の修士課程の過去問(2023年)。
受験生へのアドバイス
※1 受講生には繰り返ししつこく伝えてきたところではあるが、本試験では当校なりが臨席したうえで隣で答案執筆の介助や補助線を引くことはもちろんできない。サッカー選手のように、ピッチ上に出場した選手としてドリブル、パス、ポジショニングの自己判断を下しながらそれらを一人で行い、局面を打開せねばならない。本解説も「受験生の多くが知りたい、手っ取り早い正答例や正答パターン」を示せば、当然それに引きずられて各位が答案執筆をすることになるため、極力避けるよう配慮したいと考えている。文章を書くという行為自体がきわめて内省的な営為だからである
※2 また、参考までに付言しておけば、国公立・私立を問わず、また志望校の難易を問わず、上記の他大学出題解説は役に立つものなので、閲読しておいてください(×「国公立だから関係ないや」「私立だから見なくていいか」)
※3 答案を執筆した際は、出題分析の質の高さが担保された添削講評を受ければ、いわゆる「書きっぱなし」にならずに済むため、当校ほかで提供している「単発添削」や「講座受講」を活用することを勧めておきます
※4 なお、当校講師は社会情報学、メディア研究で博士課程で修学した経験や私立大学で「情報社会論」の講師を務めた経験があるため、東大情報学環(大学院修士課程)入試や社会科学系大学院修士課程入試の論文指導も可能です
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