上智大学文学部新聞学科[推薦入試 公募制] 小論文解説
小論文試験は、
①高校で「小論文」といった授業科目が設定されておらず、
②また、「小論文」という高校教科書があるのでもなく、
③高校で「小論文の書き方」を教わった経験のない人も多い、
④そして、正答例を「なんとなく『眺める』」だけで、実力が自ずと向上するわけでもない
いわば「ないない尽くし」のなかで学習を進める対策が難しい科目です。
本番の試験で着実に高得点を取るには、
①論文とはそもそも何か
②論文のルール、作法、構造とはいかなるものか
③論理的思考力、表現力、読解力をどのように培うか
④図表読み取り問題で問われる《情報の取り出し》《解釈》《評価》
について理解したうえで、的確に対策と実践演習を進める必要があります。
合格者の声(2025年度大学入試)
出題解説
ジャーナリズムに関する修学のための基礎力測定
上智大学新聞学科の公募推薦入試問題は、ひじょうにユニークである。
そもそも新聞学科という古めかしい学科名のままにしているのは管見の限り、上智と日大の二校だけである。同志社の新聞学科は、メディア学科へと名称変更した。「日本マス・コミュニケーション学会」が、「日本メディア学会」へと変わったように、この二校も近い将来、学科名を変更することになるだろう。新聞が広く講読されないようになった現代社会において、大学の学科名を「新聞」とし続けることには無理があるという議論は当然、大学内部でもなされているはずだからである。
それはさておき、「ジャーナリズムに関する基礎的な試問」と銘打たれた課題名は、いわゆるかつての「マスコミ」の入社試験を思い起こさせる。これは決してネガティブな意味合いではなく、ジャーナリズムに関して修学する際に、次の二点はきわめて重要である。
小論文試験で「私は」と書くことの意味合い
第一に、出題される2題のうち、問1は「以下のテーマについて、1000字程度で作文を書きなさい」という設問文で、漢字二文字などで示されたテーマ、事柄について記述をおこなう。課題文や資料は与えられておらず、受験者の「問いを発見する/見つけ出す能力」「手がかかりなく、ある意味では自由に立論をおこなう能力」「設問を捌ききる能力」を遺憾なく問う出題である。高校生のなかでこうした能力を無意識的に訓練し、開発している人はおそらくごく少数だろう。つまり、自由作文に慣れ、習熟しておく必要が明確にある。
問1の出題テーマ
各年度の出題テーマは次の通りである。
- 2024年 憲法
- 2023年 支援
- 2022年 自助と公助
- 2021年 ヤジ
2022年は漢字二文字ずつ、2021年は片仮名であったにせよ、大きな差はないだろう。語句や単語を説明させる。「ジャーナリズムに関する基礎的な試問」と掲げられている以上、小論文のスタイルで答案を書くことはもちろん、ジャーナリスティックな立論、つまり例えば新聞報道に近いようなスタイルで執筆しても合格圏内、高得点を狙うことはできるだろう。
これは面接対策ともなるだろうが、ではなぜ新聞報道は「私は」と記事に書かないのであろうか。書いているのは、それぞれの記者である。「客観報道」とはなにかというテーマに連なる問題機制である。もちろん、「私は」と書かない「客観報道」に対する問い直しや見直しは存在する。
わかりやすく例を挙げれば、戦争取材時に「目の前で子どもが兵士に暴力を振るわれそうになっている、あるいは乱暴されそうになっている」シーンにある記者が遭遇した際に、「傍観者として、ただカメラで撮影し続ける」ことは、はたして「正しい」のかという問題を孕んでいる。また、「飢えた子どもが猛禽類に食べられそうになっている時に、その記者は傍観者であり続けることはできるのか」、はたして報道する側にとっての人間としての倫理や価値観、考え方と取材行為とはどのような関係にあるのかは、ジャーナリズム・スタディーズにとって根本的な問題系を形づくっている。
したがって、この上智の新聞の推薦小論文試験では、ジャーナリスティックな視座や立脚点から「私は」と書くことが許されていると捉えられる。そこで問われるのは「私は」と書くことの意味である。「作文を書きなさい」という設問文には、おそらくそこまでの意味合いが含まれている。つまり、ジャーナリスティックに「私」を表出するとは、どのようなことなのかを意識した答案記述が求められている。なかなか難しいことが問われているものの、日本を代表する新聞学科である以上、受験生には高度な思考と能力を問うのはごく自然であるとも見受けられる。
問2の語句・単語説明問題で測っている受験者の能力
第二に、問2に設定された語句・単語説明問題である。
日本におけるジャーナリズム研究の代表格である東大情報学環でもつい最近まで見られた出題形式である。また、この小論文解説コンテンツの巻末に示した一橋やお茶の水などの大学院試験問題からもわかる通り、大学院入試では一般的な出題スタイルである。60字などひじょうに短い字数でコンパクトに社会的なテーマや事柄、事象や現象のみならず学術的な理論や概念について説明する能力について、問2は端的に測定することができる。これは大学院入試のみならず「マスコミ」入社試験でも見られる。「だらだら」と書かれた新聞記事というものをみたことがないだろう点から「ジャーナリズムに関する基礎的な試問」という課題名の意味合いが理解できるだろう。
そして、実はこの問2で問われている端的に要約する力は、大学入学後にレポートや卒業論文を書く際に役立つものである。もちろん、かつての「マスコミ」も入社後の筆力の基礎を判定しているわけである。
※インタビュー冒頭部分(約9分)
※カフェでの取材だったため、周囲の音が入っていることを予め了解下さい
要約力とニュース接触
実は、大学入学後に学生が苦労するのは、この要約である。私事で恐縮ながら、私も大学院に40歳を過ぎてから入学し、当初とにかくできなかったことといえば、学術的な理論や概念を「つまり一言(一文)でいえば、どういうことなのか」を説明できなかった。なぜなら、その対象としている理論や概念が「とにかく難しく」数百ページにわたる高度で難解な論考を一文で言い表すような学術的な訓練を経ていなかったからである。それはどういうことなのかを会得するのに少なくとも半年以上を費やした。その要諦をつかみ取れば、「今までできなかった」ことができるようになったと感じ、難しい論考と対峙することも苦にならなくなった。
それほど要約する力は重要であり、問2ではその素養と基礎力を測っているのである。
この問2に対応するためには、普段のニュース接触が鍵となる。その具体的な方法は、メディアリテラシーを涵養することでもあり、当校でメディア系学部学科のみならず多くの人文社会科学系の大学学部による小論文試験を受験する際に重要視したうえで、レクチャーをおこなっています。
なお、2024年度[推薦入試 公募制] は、11月30日(土)に学科試問と面接が予定されています。
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合格者の声
※1 参考までに付言しておけば、国公立・私立を問わず、また志望校の難易を問わず、上記の他大学出題解説は役に立つものなので、閲読しておいてください(×「国立だから関係ないや」「私立だから見なくていいか」)
※答案を執筆した際は、出題分析の質の高さが担保された添削講評を受ければ、いわゆる「書きっぱなし」にならずに済むため、当校ほかで提供している「単発添削」や「講座受講」を活用することを勧めておきます
※2 なお、当校講師は社会情報学、メディア研究で博士課程で修学した経験や私立大学で「情報社会論」の講師を務めた経験があるため、東大情報学環(大学院修士課程)入試や社会科学系大学院修士課程入試の論文指導も可能です
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小論文の書き方
- 小論文に関する基本的な考え方や知識(①②③)
- 各大学の入試小論文解説(④)
- 正答例にくわえてWeb上での講義(⑤)
- 当校受講生の合格者の声(⑥)
を以下のリンクからみることができます。
大学入試の小論文解説・正答例&Web講義
具体的な対策問題
過去問以外に、どのような問題に取り組むことが小論文対策になるかわからないといった相談の声が寄せられることがあります。
当校では、アドミッションポリシーを分析し、過去問以外で事前に取り組むべき対策問題を選定して提示するほか、時事課題論文については新聞記事から作問して用意するケースもあります。
参考)東大情報学環・お茶の水女子大・一橋大 院試過去問
例えば、東大情報学環(大学院修士課程)入試では、次のように出題される(2020年過去問)。
院試では課題文は与えられないことが一般的です。
以下はお茶の水女子大と一橋大の修士課程の過去問(2023年)。
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