東京都立大学人文社会学部[前期日程]一般選抜 小論文の概要と傾向
出題解説
根本的なテーマ・事柄を問う平易な課題文の良問
受験生に根本的なテーマや事柄について考えさせる比較的平易な課題文が採られた良問が出題されている。設問の設定も的確で、問1・2で課題文の重要な主張や意見をコンパクトに要約させ、受験者が問3で自身の考えを800字で述べやすいよう導線が設計されている。
例えば2023年度の出題でいえば、小論文試験を受けている受験生に対して《そもそも小論文とはなにか》というテーマをより一層深い次元で考えさせる《人間にとって言葉とは何か/言葉と思考の関係とはどのようなものか/文章を書くとはどのようなことなのか》が問われている。
求められる着実でオーソドックスな小論文対策
難解な論考を課題文として採用し、設定することなく、「ごく自然に」受験生のそれこそ「手が届きそうな」補助線が設けられている点から、奇をてらうことなく着実な小論文試験対策を講じていれば、合格を手繰り寄せることができるという意味でも良問であろう。
わかりやすくいえば、見たこともない変化球やプロ選手しか打ち返せないような160キロの剛速球に対する準備を大学側は求めていない。端的にいえば、①課題文を正確に読解する力、②筆者の主張や意見を的確に要約する力、③それらを基盤として論理的に自身の考えや意見を論述できる力を求めている。
大学教員が求める受験生の能力と資質への理解
つまり、大学教員が高校生、そして入学後の大学生に求める能力や資質とはどのようなものと捉えているのかについてしっかりと理解し、準備を進めておくことと実際の答案がキーポイントとなる。受験生や大学生の読解力や論理的思考力や表現力をどのようなものだと大学教員は捉えているのかを知ることで、的外れにならない準備の進行と答案の提出が実現する。また、提出答案のなかで《相手に伝わる文章や文章形式》を通じて一貫した論旨で展開できているかもポイントであり、当校の講座で丁寧かつ高い精度でレクチャーしていきます。
※インタビュー冒頭部分(約9分)
※カフェでの取材だったため、周囲の音が入っていることを予め了解下さい
赤本正答例
なお、参考までに触れておけば、例えば2023年度出題の問1・2の要約および問3の意見論述に関して、赤本の正答例は設問や課題文にいわば「忠実に寄り添おう」という姿勢が理解できる一方で、課題文や筆者の意見に対する理解は十分でないように思われる。また、それが答案記述にあらわれている。
要約とは、課題文で扱われている具体的なテーマや事柄をもちろん等閑視するものではないものの、《それが結局、どういう意味なのか》というある程度俯瞰した視点や視座を示す必要がある。
例えば問1の冒頭(以下の正答例)で示した「言語活動」というタームは、水準を上げて大学院入試であれば「やや甘い」曖昧さを伴う語句の使用と大学教員(採点官)にとられかねない、あるいはそれは何を指し示しているのかを明示することが求められるであろうにせよ、大学入試であればまず問題ないだろう。なぜなら、文部科学省の学習指導要領で次のように用いられているからである。
生きる力をはぐくむことを目指し,基礎的・基本的な知識及び技能を習得させ,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力等をはぐくむとともに,主体的に学習に取り組む態度を養うため,言語活動を充実することとしています。
文部科学省 学習指導要領「生きる力」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/gengo/1301088.htm
赤本の正答例は、「言葉」「コトバ」「言語」の課題文における使われ方を注視する必要がある点を見逃さないとする姿勢を評価すべきで、そこに対する異論も違和感も何らない一方で、与えられた課題文の主張や図表から読み取れる内容を正確に把握すると同時に「ただ単に」課題文や図表から必要な要素を抽出したうえで引用するばかりでなく、俯瞰した視座や視点からまとめることもきわめて重要である。
正答例
2023年度問題
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夏休みが終わり、大学共通テストの出願受付が始まりました。「小論文は、副科目」と準備を後回しにしてしまうと、「早めにやっておくべきだった…」と直前期に後悔することになりかねません。受験に打ち勝つためには冬を迎える前の準備開始が重要です。本格的な小論文対策を始めましょう。
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小論文の書き方
- 小論文に関する基本的な考え方や知識(①②③)
- 各大学の入試小論文解説(④)
- 正答例にくわえてWeb上での講義(⑤)
- 当校受講生の合格者の声(⑥)
を以下のリンクからみることができます。
大学入試の小論文解説・正答例&Web講義
具体的な対策問題
過去問以外に、どのような問題に取り組むことが小論文対策になるかわからないといった相談の声が寄せられることがあります。
当校では、アドミッションポリシーを分析し、過去問以外で事前に取り組むべき対策問題を選定して提示するほか、時事課題論文については新聞記事から作問して用意するケースもあります。
参考)東大情報学環・お茶の水女子大・一橋大 院試過去問
例えば、東大情報学環(大学院修士課程)入試では、次のように出題される(2020年過去問)。
院試では課題文は与えられないことが一般的です。
以下はお茶の水女子大と一橋大の修士課程の過去問(2023年)。
※1 参考までに付言しておけば、国公立・私立を問わず、また志望校の難易を問わず、上記の他大学出題解説は役に立つものなので、閲読しておいてください(×「国立だから関係ないや」「私立だから見なくていいか」)
※答案を執筆した際は、出題分析の質の高さが担保された添削講評を受ければ、いわゆる「書きっぱなし」にならずに済むため、当校ほかで提供している「単発添削」や「講座受講」を活用することを勧めておきます
※2 なお、当校講師は社会情報学、メディア研究で博士課程で修学した経験や私立大学で「情報社会論」の講師を務めた経験があるため、東大情報学環(大学院修士課程)入試や社会科学系大学院修士課程入試の論文指導も可能です
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