琉球大学国際地域総合学部 小論文の概要と傾向
出題の傾向
概要
琉球大学は、次の通り多くの学部で小論文試験を課している。
例えば、国際地域総合学部では[昼間主][夜間主]コース、[前期][後期]日程のみならず、学校推薦型Ⅰのいずれでも小論文試験が課されている。また、国際的思考系、論理的思考系、数学的思考系が設定されている。
ほかに人文社会学部、教育学部だけでなく理学部、医学部、農学部などでも各試験方式のなかで小論文が科目設置されている。
つまり、琉球大が小論文を重視していることがわかる。
対策
ただし、受験生にとって悩ましい点は、著作権の都合から与えられた課題文が公開されていないことだろう。国立大学が各種法令を遵守することは当然だとしても、なにがしかの方策を探ったほうがよいようにも感じる。
かといって、過剰に悩む必要もないとはいえる。出典やその引用の頁数は明記されているとともに、当校のように塾であれば設問や出題意図からどのようなことが受験生に問われているのか、対策としてどのようなことを行なえばよいのかを見通すことに長けている。
大学院の筆記試験対策において過去問の課題文が示されておらずとも対策を講じるのはごく一般的で、当校代表講師も限られた準備期間のなかでそうした対策を進めた経験がある。つまり、課題文がなくとも対策を講じることに慣れている。
令和６（2024）年度 国際地域総合学部 国際地域学科（論理思考系）
注目すべき点は、経済学、経営学系の学部ではない国際地域総合学部で《競争》をめぐる論考が取り上げられていることである。現代における競争をめぐる議論は、学部系統を超えて社会のなかで主題化しつつあることを示している。
課題文の井上義朗『二つの「競争」―競争観をめぐる現代経済思想』では、今日人口に膾炙している語である「競争」に関して、その根本的な意味を探り、アダム・スミスが著作で用いたコンペティションとエミュレーションから検討をくわえている。
コンペティション
同質的な企業間で淘汰されないよう努力する、いわば「負けない」ことに主眼を置く競争観
エミュレーション
質的向上を目指し、「勝とうとする」競争観
ライバルとの切磋琢磨を通じた追いつき、追い越せという過程が際限なく続き、終わりがない
課題文は、コンペティションではなくエミュレーションに競争の本質を捉える。そうした意味でオリジナリティーに溢れた論考である。琉球大はこうした観点からこの課題文をチョイスしたのであろう。
問１
筆者は、同じ「競争」について議論すると、その評価についての二つの主張は平行線をたどるばかりである、と指摘しています。その理由を本文の論理展開を参考に、あなたの言葉を用い、150文字以上300文字以内で述べなさい。
この設問の特徴は、「本文の論理展開を参考に、あなたの言葉を用い」るよう求めていることである。つまり、課題文の文意をとって、自身ならではの言葉で表現しなくてはならない。
要約は、ただ単に課題文中の語句をパッチワークのように切り貼りすることではないと理解していれば、設問文の「あなたの言葉」を過剰に意識するようなこともないだろう。当校ではそうした要約の方法を初歩からレクチャーしています。
（※画像クリックで該当ページへ）
- インタビュー冒頭部分（約９分）
- カフェでの取材だったため、周囲の音が入っていることを予め了解下さい
問２
本文の「競争」のように、議論すると、その評価についての二つの主張が平行線をたどる他の具体例を一つ取り上げなさい。そして、取り上げた具体例の評価についての二つの主張が、なぜ平行線をたどるのかについて、そして、その平行線の議論を解決するにはどうすればよいかについて、本文の論理展開を参考にあなたの考えを600文字以上900文字以内で述べなさい。
問２では競争に関する議論で、具体例、根拠、解決の３つを示すよう要求している。ここでも「本文の論理展開を参考に」するよう付されている。つまり、課題文を論拠にしながら、「あなたの考え」言い換えれば自身の考えを記述する必要がある。「あなたの考え」を求められた際に、いわばスタンドアローンで考えや意見を記述するのではなく、この場合でいえば課題文に沿いながら論旨を展開していくことが求められている。
受講生の提出答案のなかでも論拠や典拠との「距離感」をうまくとれないケースがみられる。そうした「距離感」は、ニュアンスの問題を含んでいるため、やはり小論文対策をきちんと講じておく必要があるだろう。
当校レクチャー
当校では、なかなか他塾、たとえばＺ会やベネッセなどの添削講座では伝えてこないだろう点も重視してレクチャーしていきます。それはいわゆる「手っ取り早い」学習とは趣が異なるとはいえ、大学が一定以上の理解力、考察力、論理的思考力、記述力を受験者に要求していることを受けて、試験時の提出答案が課題文とどのような関係にあれば高評価となるかを重視したレクチャーを当校は進めています。
また、次のような大学の出題意図をくみ取ったうえで、添削のみならず講評を通じた受験生への指導をおこなっています。
本論文の解答には、人文・社会科学の複合分野の学際的学びや現代の多様な課題に対して関心をもち、得られた知見を社会全般に還元する態度も求められる。
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- 各大学の入試小論文解説（④）
- 正答例にくわえてWeb上での講義（⑤）
- 当校受講生の合格者の声（⑥）
を以下のリンクからみることができます。
大学入試の小論文解説・正答例＆Web講義
具体的な対策問題
過去問以外に、どのような問題に取り組むことが小論文対策になるかわからないといった相談の声が寄せられることがあります。
当校では、アドミッションポリシーを分析し、過去問以外で事前に取り組むべき対策問題を選定して提示するほか、時事課題論文については新聞記事から作問して用意するケースもあります。
参考）東大情報学環･お茶の水女子大･一橋大 院試過去問
例えば、東大情報学環（大学院修士課程）入試では、次のように出題される（2020年過去問）。
院試では課題文は与えられないことが一般的です。
以下はお茶の水女子大と一橋大の修士課程の過去問（2023年）。
※１ 参考までに付言しておけば、国公立・私立を問わず、また志望校の難易を問わず、上記の他大学出題解説は役に立つものなので、閲読しておいてください（×｢国立だから関係ないや｣｢私立だから見なくていいか｣）
※答案を執筆した際は、出題分析の質の高さが担保された添削講評を受ければ、いわゆる「書きっぱなし」にならずに済むため、当校ほかで提供している「単発添削」や「講座受講」を活用することを勧めておきます
※２ なお、当校講師は社会情報学、メディア研究で博士課程で修学した経験や私立大学で「情報社会論」の講師を務めた経験があるため、東大情報学環（大学院修士課程）入試や社会科学系大学院修士課程入試の論文指導も可能です
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