東京大学教養学部学際科学科 学校推薦型選抜 小論文の概要と傾向
出題解説
令和6(2024)年度出題
東京大学教養学部学際科学科の2024年度学校推薦型選抜における小論文試験は、宇野重規『民主主義とは何か』が課題文として採られた。東大の文系に推薦で入学を希望する受験生で「宇野重規って誰?」となる人はおそらくいないであろうから、説明は最小限に留めるが、宇野は東京大学社会科学研究所教授で政治思想史・政治哲学を専門分野とする日本を代表する研究者といっていいだろう。日本学術会議における任命拒否で知った人もいるはずである。
岩波新書『学問と政治―学術会議任命拒否問題とは何か』は、「当事者六名が、その背景と本質を問う」た本である。また、朝日新聞の取材に対して「私は日本の民主主義の可能性を信じることを、自らの学問的信条としています」と答えている通り、わかりやすくいえばリベラルさを思想信条とする研究者である。その宇野による著作から同大学内で出題されたわけである。なお、令和5(2023)年度の京都大学特色入試でも宇野の『民主主義とは何か』は課題文として採られている。
出題の特徴
とはいえ、設問そのものはきわめてオーソドックスである。問1で「ポピュリズムと民主主義の難しい関係」を説明させたうえで、問2で「英米で起きたポピュリズム」に関して日本における状況とその原因について意見記述を求めている。特筆すべきことではないながら、問1は7行以内、問2は制限字数の指定はない。東大を推薦で目指す「ツワモノ」である以上、もちろん大きな問題ではないだろう。大学院の試験ではごく一般的である。
重要ポイントとその意味
ここで重要なのは、日本の最高学府ともいえるだろう東大においても、課題文が与えられる際にはその要約が求められたうえで自身の意見を述べるという出題形式であることである。ただし、扱われているテーマは民主主義である。今日、権威主義、独裁主義の国家体制が広まりつつあるように見受けられるなかで、民主主義は危機に瀕しつつあるというのが識者に共通する認識といっていいだろう。
例えば、神戸市外国語大学でもノーベル経済学賞を受賞した世界的な経済学者であるA.センによる論考から「民主主義は重要であると筆者(セン)が考える理由」やセンの見解に対する賛否を含めた意見記述が出題されている。つまり、民主主義の危機という現状をどう捉えるのかが現代社会で問われており、高校生であっても確かに論じられる能力が求められているのである。
※インタビュー冒頭部分(約9分)
※カフェでの取材だったため、周囲の音が入っていることを予め了解下さい
日本における民主主義状況とポピュリズム
その際に、ポピュリズムは避けて通ることのできないテーマであろう。宇野の論考でも取り上げられている通り、米国トランプ大統領の政治手法が広く議論されている。2024年11月に実施予定の米国大統領選に向けて、民主党はバイデン大統領、共和党はトランプ前大統領がそれぞれ候補者として指名される状況のなかで、ますますポピュリズムをめぐる議論がなされていくだろう(2024年7月現在)。こうした事態をどう見立てるのかが東大の推薦入試で問われているのである。
そして、そうした事態は決して「対岸の火事」なのではなく、日本における民主主義状況を論じることにつながる。なぜ「つながる」といえるのか、そもそも英国、米国、日本など国や地域という水準とグローバリゼーションというコンテクストからの検討はどのような関係にあるのかを論じる必要もあるだろう。これは当校ハイレベル講座でピックアップしている渡辺靖『文化を問い直す』(岩波新書)でも大きなテーマとして取り扱われている。
「グローカル」というフレーズが示す通り、コミュニティの論理がナショナルへと流れ出し、広まり、グローバルな論理がナショナル、コミュナルな水準へと還流し、循環しつつ、それぞれの要素は絡まりあいながら混交し、溶解しながら複層化しつつあるという特徴がある。つまり、複雑な過程と力学がその特徴なのである。
グローバリゼーションとの関わり
日本における民主主義状況やポピュリズムという現象、事象に関する記述の際に、「客観的」という言葉はふさわしくないが、いかに透徹とした視点で現実状況を観察し、記述できるかとともに、その現象や事象の原因について相関関係ではなく因果関係として示すなかで英米のみならずグローバリゼーションという視点を盛り込まざるを得ないだろう。
東大の推薦入試という「トップオブトップ」の選考である以上、そうしたグローバリゼーションが現実態でいえば1980年代以降、とりわけ日米英でみられ、先進経済圏における福祉国家の衰退、そして新自由主義に基づく政府施策、経済施策の推進とその考え方や価値観が社会のあらゆる領域に浸透し、広まっていった過程や意味するところについても端的に触れざるを得ないだろうと思われる。
レクチャーの方針
東大を推薦で受ける人はひじょうに限られているはずで、もし当校にそうした受講生が偶然来るとすれば、いわば総力戦体制を敷くことになる。代表講師と受講生は相同の知識をもつに違いないという前提に立ち、博士課程に所属する若手研究者や現職都内大学教員の助力と参戦を得ながら、ただ単なる大学受験対策というよりも知的好奇心を満たしながらいかに大学水準の人文社会科学を先取りした内容をレクチャーするかに注力することになります。
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を以下のリンクからみることができます。
大学入試の小論文解説・正答例&Web講義
具体的な対策問題
過去問以外に、どのような問題に取り組むことが小論文対策になるかわからないといった相談の声が寄せられることがあります。
当校では、アドミッションポリシーを分析し、過去問以外で事前に取り組むべき対策問題を選定して提示するほか、時事課題論文については新聞記事から作問して用意するケースもあります。
参考)東大情報学環・お茶の水女子大・一橋大 院試過去問
例えば、東大情報学環(大学院修士課程)入試では、次のように出題される(2020年過去問)。
院試では課題文は与えられないことが一般的です。
以下はお茶の水女子大と一橋大の修士課程の過去問(2023年)。
※1 参考までに付言しておけば、国公立・私立を問わず、また志望校の難易を問わず、上記の他大学出題解説は役に立つものなので、閲読しておいてください(×「国立だから関係ないや」「私立だから見なくていいか」)
※答案を執筆した際は、出題分析の質の高さが担保された添削講評を受ければ、いわゆる「書きっぱなし」にならずに済むため、当校ほかで提供している「単発添削」や「講座受講」を活用することを勧めておきます
※2 なお、当校講師は社会情報学、メディア研究で博士課程で修学した経験や私立大学で「情報社会論」の講師を務めた経験があるため、東大情報学環(大学院修士課程)入試や社会科学系大学院修士課程入試の論文指導も可能です
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