法政大学人間環境学部 自己推薦入試【解説】
小論文試験は、
①高校で「小論文」といった授業科目が設定されておらず、
②また、「小論文」という高校教科書があるのでもなく、
③高校で「小論文の書き方」を教わった経験のない人も多い、
④そして、正答例を「なんとなく『眺める』」だけで、実力が自ずと向上するわけでもない
いわば「ないない尽くし」のなかで学習を進める対策が難しい科目です。
本番の試験で着実に高得点を取るには、
①論文とはそもそも何か
②論文のルール、作法、構造とはいかなるものか
③論理的思考力、表現力、読解力をどのように培うか
④図表読み取り問題で問われる《情報の取り出し》《解釈》《評価》
について理解したうえで、的確に対策と実践演習を進める必要があります。
合格者の声(2025年度大学入試)
入試の特徴
法政大学人間環境学部の自己推薦入試は、一言でいえば「現代社会が抱える諸課題に関するイシュー、テーマ」が出題されている。そして、学部名の通り、アドミッション・ポリシーに示されているように、環境と人間に関する諸問題が取り上げられている。
その最も重要なテーマは、言うまでもなく、地球環境問題である。津田塾大学総合政策学部の2025年度総合型選抜の事前課題のみならず、当然、大学小論文試験の頻出テーマである。もちろん入試における争点というよりも、まさに現代社会における争点である。地球環境の持続可能性をいかに担保するのかは、人類全体にとってのテーマである。そうであるがゆえに法政大学も学部として設置しているわけである(学部英語表記であるFaculty of Sustainability Studiesに注目しよう)。
アドミッション・ポリシー
- ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシーに示された本学部の教育課程を学修し、学士号を取得するために十分な基礎学力を身につけている者。
- 環境と人間の共存、人間と人間の共生のあり方に関心を持ち、「持続可能な社会」の実現に貢献する意欲を持つ者。
- グローバルな国際関係からローカルなコミュニティに至るまで各種のスケールを横断して展開される現代社会の様々な問題に関心を持ち、学際的な学びを通じてその解決方法の探求をおこなうことに意欲を持つ者。
①はいずれの大学学部にも共通するもので特筆すべき点はないが、②に示されている環境、人間、社会の関係を複雑に捉え、③グローバリゼーションやローカリゼーション、そしてグローカリゼーションとは何かに関する確かな知識と理解が受験者には求められている。
②の複雑な問題群を対象化して分析、考察することを掲げた学部である以上、具体的かつそうした問題機制を抽象化した視点から議論することも求められている。わかりやすくいえば、環境、人間、社会にくわえて文化、教育、産業など幅広く「現代社会が抱える諸問題」を捉える学際的な興味関心も小論文試験、面接試験で問われる。
合格者の声 ※画像クリックで該当ページへ
自己推薦・国際バカロレア利用自己推薦
- 高い自発性をもち、自由な発想力を有し、リーダーシップをとることができる者。
- 本学部の教育内容に興味を持ち、本学部への入学を強く希望していること。
そうした「現代社会が抱える諸問題」を論じていく際に、1の通り主体的に、また既成概念に拘泥することなく捉える視座や資質が重視されている。当然のことながら、地球環境問題をはじめとする解決が目指される現代の諸課題は、従来の考え方や価値観を刷新していく必要がある。それはつまり、学術の世界でいうところの「批判」あるいは「批判的思考力」と呼ばれる能力が重要であることを指し示している。
2022年度問題
双方の問題は新聞記事が課題文として採られた。
[問題1]食品ロス削減とその対策
広くニュースで報じられているテーマである。解答答案のポイントは、国(政府)、自治体、事業者、消費者のいずれかの主体(アクター)を選んだうえで立論する点にある。ここに示された4つのアクターがどのような関係にあるのかを示しつつ、どの主体が具体的に何に取り組む必要があるのかを論じる。
[問題2]コロナ感染者数の数理モデルに基づく把握・予測の意義と限界
いわゆるコロナ禍の際に、日本のみならず台湾のほか欧米でも全数把握が目指された。その有力な手段が数理モデルである。厚生労働省クラスター対策班を務めた京都大学の西浦博教授らによる感染症数理モデルを利用した流行データの分析はつとに有名で、テレビ報道番組で教授を目にしたことがある人は多いだろう。
また、「ビッグデータでコロナと闘う」などと雑誌メディアで喧伝された慶応大学の宮田裕章教授らによる厚生労働省とLINEによるコロナ全国調査も記憶に新しい。そうした数理的なモデルや手法の意義と限界を論じたい。
2023年度問題
[問題1]牛からみた地球環境問題
広く知られるように、課題文にある通り、牛のゲップは日本におけるメタン排出量の約3割を占めるという。そして、日本のみならず、牛は農業や畜産にとって、きわめて重要である。2022年度問題で示された通り、国(政府)、自治体(地方公共団体)、事業者(農家、食肉関連業界)、自然保護団体、消費者などのアクターが、それぞれの立場や考え方、行動や心理から複雑に牛をめぐる問題機制を形づくっている。参考までに日本におけるエネルギー起源の二酸化炭素排出量を数値でイメージするとすれば、次のようになるといわれる。
- 9.6億トンのCO2は、約43,065個分の東京ドーム容積に相当するとされる(1990年度)
- 12.6億トンのCO2は、約56,452個分の東京ドーム容積に相当するとされる(2022年度)
[問題2]現代福祉国家における諸課題
ポイントを掻い摘んで3点、述べておこう。
「1980年代、以降…」と序文に説明された内容の意味を把握したい。傍線部(1)は経済学における「市場の失敗」に関する記述とみなしてよいだろう。新自由主義について理解しておく必要がある。
当校講師陣は、こうした難しいと感じるキーワードとその内容に関して、十分に詳しく説明できる準備があります。
傍線部(2)は、つまり一言でいえば公共圏public sphereの縮減、パブリックの減退を指している。(3)は、中心と周縁、つまりメインの人びとではなく、周辺化/排除された者としての女性という視点が提出されている。つまり、ジェンダーという概念がなぜ登場し、今日広まったのかに関する理解が求められている。
この点に関しても詳細にわかりやすく説明するアーカイブ授業動画を準備しています。
(当校受講生とのやり取りから、高校生によるジェンダーに関する理解は進んでいない実態が浮かび上がったことを受けて説明動画を用意してあります)
こうしたテーマを高校生は抽象的で難しいと感じるかもしれない。しかし、出題されている以上、正確かつ着実に理解しておくべきである。その具体的事例として設問(3)で示された「子ども食堂」について論じる際に、抽象化された課題文論考をきちんとふまえる必要があることはいうまでもない。具体と抽象の接続は、《論文とはなにか》に関する知識と理解が求められる。
以上の点に関して統合的にわかりやすくレクチャーすることが当校はできます。
2024年度問題
[問題1]食と社会
2023年度に続き、食がテーマとして選ばれた。課題文の筆者である岡根谷実里は「世界の台所研究家」と称され、東京大学大学院工学系研究科修士課程を経て、クックパッド株式会社に勤務したのち、独立したというユニークな経歴をもつ。そこから食と社会をテーマとする課題文が採られたユニークな出題である。
[問題2]低地と水害
一方、問題2は低地と水害という比較的、大学小論文では珍しい地理学者による論考が採用された。法政大学にはこれも設置されている大学はあまり多くはない地理学科が文学部にある。管見の限りでは、地理学にまつわる論考が大学入試小論文はお茶の水女子大でみた程度で、稀といえるのかもしれない。しかし、地理学はGIS(geographic information system地理情報システム)など最新のテクノロジーとの融合によって発展を遂げる刺激的で災害や天候などとも深く関わる有用な学問領域である。それに焦点が当てられた。
「水害リスクを自然環境、土地利用、防災施設、地域コミュニティなどの側面から多角的に論じる」ことが問われた。答案はもちろん、この四項からまとめあげ、論じ切る力量が必要である。かといって、いわゆる総花的な議論ではなく、首尾一貫した論旨を展開せねばならない。
参考までに当校代表講師による論考を記載しておこう。設問の水害リスクは、日本という限られた場所に固有の問題なのではなく、例えば米国でも同様に布置されている。自然環境、土地利用、防災施設、地域コミュニティのほかメディアやジャーナリズムといった側面から水害リスクを論じている。
【参考】米国のNPOニュースメディア組織Texas Tribuneによる報道の分析―テキサスでの大型台風被害をめぐる2016年の「Hell and High Water」報道を事例として―
https://bit.ly/3MO7P9C
日本マス・コミュニケーション学会・2019年度秋季研究発表会・予稿
合格するために必要なこと
こうした出題の対策を進めるにあたり、当校では早稲田博士課程出身の講師陣がその経験に基づきながら、合格に必要な論述に関する知識を講義で提供することができます。
それとともに、小論文提出答案に対する大学教員水準の添削講評を通じて、実力向上のためのフィードバックを提示していきます。書けるようになるまでしつこく丁寧にレクチャーをおこなっていくことが当校講座の特徴です。
- インタビュー冒頭部分(約9分)
- カフェでの取材だったため、周囲の音が入っていることを予め了解下さい
レクチャーの方針
合格を達成すべき最大の目標に据え、それに向けて努力するのは当然としても、ただ単なる大学受験対策というよりも知的好奇心を満たしながらいかに大学水準の人文社会科学をある程度先取りした内容をレクチャーするかに注力することになります。面接対策としてもひじょうに有用です。博士課程出身者らによる学会発表、論文執筆の経験をふまえた実践的な指導をおこないます。
対応講座・コース ※受講申込受付中
講座・コース群 ※受講申込受付中
精度の高い分析に基づいた小論文対策で志望校合格へ
~質の高いオンライン個別指導で「受かる」小論文が書けるようになる~
総合型選抜
小論文対策にくわえて志望書添削・面接練習・対策も行いたい方向け
一般選抜
難関中堅国公立・私立大学の小論文対策を着実に行いたい方向け
時期や要望に応じた講座・コース群 ※受講申込受付中
総合型選抜、学校推薦選抜の入試が始まり、いよいよ受験「本番」に向けた学習に力を振り向ける時期に入りました。「小論文は、副科目」と準備を後回しにしてしまうと、「早めにやっておくべきだった…」と直前期に後悔することになりかねません。受験に打ち勝つためには冬を迎える前の準備開始が重要です。本格的な小論文対策を始めましょう。
※11、12月中いつからでも対策開始への対応が可能な講座・コース群です
【1カ月コース】
※直前対策
直前期に短期間で高い精度の準備をしたい人へ!
↑小論文対策・資料読み取り問題を急ピッチで、そして高い精度で仕上げたい人向け
【2カ月コース】
※早期対策
秋から小論文対策をスタートさせた受講生がいます!
↑2カ月前ころから準備を開始しておいて、焦らずにアドバンテージをとりたい人向け
【3カ月コース】
※早期対策
昨年1点差で惜しくも涙をのんだ既卒生も受講中!
↑3か月前ころから着実に準備を開始し、他の受験生に圧倒的な差をつけたい人向け
【4カ月コース】
※月謝制
読み、書く力がグンと上がった現役生が受講中!
↑小論文は「書いたことがない」、でも来年初には小論文対策を完成させたい人向け
基本講座
国公立二次対策も
※専科講座以外の大学学部
※総合型選抜&一般選抜
※1・2・3・4カ月コース
ハイレベル講座
難関国公立・早慶向け
※難関国公立・早慶向け
※総合型選抜&一般選抜
※1カ月コース
早慶専科
一般選抜・総合型選抜
※早慶各学部全般
※総合型選抜&一般選抜
※1・2・3・4カ月コース
スポ科専科
一般選抜・総合型選抜
※2025年度総合問題対策
※スポーツ推薦選抜&一般選抜
※1・2・3・4カ月コース
慶応文専科
一般選抜・総合型選抜
※難度の高い小論文対策
※自己応募推薦&一般選抜
※1・2・3・4カ月コース
学芸大専科
一般選抜・総合型選抜
※各学類・コースに対応
※学校推薦型選抜&一般選抜
※1・2・3・4カ月コース
※各講座・コースとも受講人数に限りがあるため、お申し込み先着順となりますこと予めご了承ください
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動画解説(※画像クリックで遷移)
小論文の書き方
- 小論文に関する基本的な考え方や知識(①②③)
- 各大学の入試小論文解説(④)
- 正答例にくわえてWeb上での講義(⑤)
- 当校受講生の合格者の声(⑥)
を以下のリンクからみることができます。
大学入試の小論文解説・正答例&Web講義
具体的な対策問題
過去問以外に、どのような問題に取り組むことが小論文対策になるかわからないといった相談の声が寄せられることがあります。
当校では、アドミッションポリシーを分析し、過去問以外で事前に取り組むべき対策問題を選定して提示するほか、時事課題論文については新聞記事から作問して用意するケースもあります。
参考)東大情報学環・お茶の水女子大・一橋大 院試過去問
例えば、東大情報学環(大学院修士課程)入試では、次のように出題される(2020年過去問)。
院試では課題文は与えられないことが一般的です。
以下はお茶の水女子大と一橋大の修士課程の過去問(2023年)。
※1 参考までに付言しておけば、国公立・私立を問わず、また志望校の難易を問わず、上記の他大学出題解説は役に立つものなので、閲読しておいてください(×「国立だから関係ないや」「私立だから見なくていいか」)
※答案を執筆した際は、出題分析の質の高さが担保された添削講評を受ければ、いわゆる「書きっぱなし」にならずに済むため、当校ほかで提供している「単発添削」や「講座受講」を活用することを勧めておきます
※2 なお、当校講師は社会情報学、メディア研究で博士課程で修学した経験や私立大学で「情報社会論」の講師を務めた経験があるため、東大情報学環(大学院修士課程)入試や社会科学系大学院修士課程入試の論文指導も可能です
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