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目次

小論文とはなにか?

小論文とは、一言でいえば、問い(クエスチョン)を設定し、それを文章や図表、数式や化学式などを用いて論証し、その過程を通じて明らかになった点を結論(コンクルージョン)として示すものである。

この定義に戸惑う受験生も多くいるかもしれません。
例えば、

①「小論文とは、ある問題に対して『イエスかノーか』を答える文章だ」
②「小論文とは『問題点をあげて解決策を出す文章』です」
小論文とは、自分の考え(=意見)から読み手を納得させるために書く文章です」

といったような説明とは異なるからです。では、次のような設問に対してこれらの定義が通じるでしょうか?

例えば、
(A)「読むことの意味について論じよ」(同志社2023)「退屈の意味について述べよ」(早稲田2023)「国際社会において、日本の教育はどのような貢献ができるのか論じなさい」(広島大2023)※なお、早稲田・広島大は課題文がなく、与えられた設問文は短文で上述のみ
(B)「『共感』について課題文の内容にふれながら考えを述べなさい」(日本赤十字広島看護2024)
「課題文下線部の『不平等な世の中を維持するために苦労を続けるのか。それとも平等な世界をつくるための不便や不都合な状況を我慢するのか』とはどういうことか、説明しなさい」(福島大学行政政策学類2023)
(C)「ジョン・ロールズ『正義論』の解題論考を要約したうえで、ロールズの原理に立つときになされるとあなたが考える教育施策について論じよ」(お茶の水女子大2023)
(D慶應義塾大学環境情報学部および総合政策学部では、開設当初から入学試験に小論文を取り入れてきました。この小論文の試験では、資料として我々が入学試験で出してきた過去問題および要旨とその解答例・解法例を引用しました。 以下の設問に解答してください。
設問1)
過去問題1、2、3は、環境情報学部または総合政策学部の過去の入学試験で出題された小論文の問題の抜粋とその解答例です。これらの問題は受験生のどんな知的能力を測ろうとしてこれらの問題を出題したのでしょうか。過去問題1、2、3にある問題の抜粋および解答例から、これらの問題に共通する領域と構造、受験生に求めている知的能力について考え、300字以内で記述しなさい
」(慶應義塾大学環境情報学部2024)

といったような設問に対して、①と②の考え方や立場を取ると論じること(立論)自体が難しいばかりでなく、設問の要求から乖離してしまうことを帰結するでしょう。つまり、得点できない解答、答案となることが予想されます。

他方で、①のような賛否を論じさせる設問が出題されるケースはもちろんあります。

例えば、
(E)公共空間や私的領域における喫煙行動・行為の是非(愛知学院大学法学部2023
(F)放送倫理・番組向上機構(BPO)青少年委員会によるバラエティー番組での暴力的演出による青少年への悪影響に関する番組作りへの見直し・改善という見解の是非(上智大学法学部地球環境法学科2023

(G)ドーピングを禁止することに関する是非(肯定的な論拠と否定的な論拠)(神戸大学法学部2023)※
※「あなた個人の見解を述べるのではなく、資料に書かれている内容に基づいて記述すること」「4つの資料(課題文)を全て用い、どの資料に依拠したかを資料の番号を示して明らかにすること」の設問指示

など、いわゆる「YES/NO」で論じることを求める出題は特に法学部などでみられます。
こうした出題であれば、うまく事前に想定した通りの「(鋳)型」にはめ込んで、解答することも可能かもしれません(ただし(E)の出題は、「鋳型」に流し込む立論を明確に拒絶しています)。

しかし、賛否を問うていない出題テーマに対して、無理やり賛否を論じても、立論のポイントのずれた答案になること請け合いです。

文系小論文基本講座
約3時間のWeb講義を編集抜粋
(約20分)※画像クリックで動画へ
【動画目次】

00:00:00 スポ科出題の傾向と対策・2025年度総合問題について
00:02:20 《スポーツを論じる》とは
00:03:25 スポ科小論文対策の必須購読書(赤本推奨書はNG)
00:07:54 大学共通テスト[現代国語]詳細解説&共テで学べる小論文対策
00:14:03 論文とは何か・論文の書き方※講義抜粋
00:16:38 小論文は「私は」と書かない!?作文と論文
00:17:20 論文の基本的な構造
00:17:35 要約の基本
00:18:39 小論文の要諦とNG
00:19:24 小論文のテクニック5選
00:19:50 質疑応答

小論文・図表データ読み取り問題のポイント!(約15分)※画像クリックで動画へ
【動画目次】

00:00:00 OP
00:00:32 答案はどうなっていると
減点されるのか?
00:03:35 答案はどうすると加点高得点になるのか?
00:05:34 スポ科2025年度総合問題で重要なこと
00:06:23 基礎的な考える力
[2024スポ科発表の出題意図]
00:07:33 小論文の採点とはどのようなものか?
00:09:52 主張や指摘は理由や根拠とともに示す
[2024スポ科発表の出題意図]
00:12:06 ターム(単語)の並置
00:12:28 文章技法・三点セット
00:13:50 資料読み取り問題は「特殊」なのか?
00:14:29 カギカッコ~常識を疑う
00:14:52 スポーツをカギカッコに入れる?つまり「この世からスポーツがなくなったら…」

合格のポイントとは!?
(約30分)※画像クリックで動画へ
【動画目次】

00:00:00 OP
00:00:21 スポ科専願の理由
00:03:50 大学共通テスト得点状況
00:05:41 講座受講時の提出答案と添削状況
00:06:21 試験直前答案のピンチとは!?
00:07:38 講座内予想問題と本番試験
00:09:34 2024年度問題「この世からスポーツがなくなったら」
00:10:39 合格のポイント1
00:12:55 合格のポイント2
00:15:36 小論文のポイント1
00:16:27 スポ科答案論文のポイント
00:19:06 当校の見立てるスポ科答案採点基準
00:21:07 大学入学後にやりたいこと‼
00:23:18 合格後の小論文に関する感想
00:24:49 小論文のポイント2
00:25:30 小論文試験が課される理由
00:26:20 当校講座受講のメリットと内容水準
00:27:10 ご家族の合格の喜び
00:27:45 合格のポイントまとめ
00:28:56 合格のポイント再まとめ
00:29:22 合格の実感は?

小論文と作文の違い

また、

小論文とは、自分の考え(=意見)を読み手を納得させるために書く文章です」

という定義は、「確かにその通りだ」と感じさせる一方で、「では、作文やエッセイは、読み手を納得させること」を目的にしていないのでしょうか?

作文読書感想文エッセイ随筆コラムは、作者や主人公や登場人物の気持ち、感情、体験、経験を通じて、読み手を引き込んでいくことを目的とした文章です。こうした散文は、ある意味で気持ちや感情、体験や経験から読み手を説得し、共感や場合によっては反感、反発をもたらすことを目的としています。

これに対して論文は、基本的に気持ちや感情、体験や経験ではなく、論理的に論証することを通じて読み手を説得するものです。その際に、先述の通り、文章のみならず図表、数式や化学式が用いられるのです。

このような論証は、例えば日本人ならではの四季に対する感情や思い、米国人ならではのアメフトやバスケットボールチームに対するファン感情や熱狂、コンゴ人ならではの芋類の主食に対する味覚やその感じ方といったようなものは、前提から外されます。

(小)論文は、文化的背景や社会的背景といったことは前提しません。あくまでもそうした共通点や相違点は論証の対象とされるものです。

世界のどの民族、地域、宗教の人であっても、「その(小)論文を読んだ際に、論証を通じて得られた結論は変わらない」ということが前提されます(数学における命題の証明を想起すれば、イメージできるでしょう)。
つまり、それが自然科学のみならず、人文社会科学においても、科学的な論証へのアプローチの仕方といえます。

したがって、大学入試小論文は、論文のミニチュア版、導入編である以上、こうした根本的な約束事が通底、共通しています。

基本講座
国公立二次対策も

早慶専科講座
一般選抜・推薦選抜

早稲田スポ科
専科講座

学芸大
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単発添削
コース

論文の「型」

このように述べると、「どうにも見た目に難しく、太刀打ちできなそうだ」「論文については、大学入学後に勉強するので、取り急ぎ、目の前の大学入試で《手っ取り早く書けるようになる》型やパターンを提示して欲しい」と感じる受験生もいるかもしれません。

そこで、論文の型を端的に示すならば、それは次の通りです。

論文の「型」とは
  • 問題意識・問題設定(の提示) ~人間や社会にとってなにが重要なのかを示す
  • 観察(の記述) ~具体的事例を挙げたうえで、それについて説明する
  • 分析 ~その事例はどのような特徴があるのか(どのような特徴があると導き出せるのか)
  • 考察 ~①・②・③をふまえ、さらに鋭く結論としてまとめる


※①から④については、オンライン講義で綿密に時間をかけて説明します。こちらのページを参照
※また、①から④は添削で繰り返し具体的に指摘、助言をくわえていきます

大学入試小論文において①から④まで記述すれば、論理的な構成で減点されるようなことはまずないでしょう。

書き慣れれば、決して難しいものではありません。

というのは、大学入試から大学入学後の卒業論文だけでなく、学問の世界では修士論文、博士論文、学術査読論文と水準がどんどんと上がっていきます。例えるなら、草野球から市区町村、都道府県大会、全国大会、世界大会へとレベルが上がるにつれ、要求水準は当然上がることと共通しています。アマチュアからプロに向かうにつれ、ハードルが上がります。例えば大谷翔平選手の活躍をみればわかる通り、段階を追うごとに、求められる基準はより一層厳しくなるわけです。

つまり、大学入試小論文は、あくまでも高校卒業から大学入学への橋渡しと位置づけられた選考であり、求められる水準はもちろん大学のレポートや卒業論文に置かれているわけではありません。

大学のレポートや卒業論文に比して、はるかに求められる基準は低いものです。

例えば、答案論文を書くにあたり、先行研究の調査、渉猟、マッピングといったことは、限られた時間で答案を執筆する大学入試小論文において当然行われるわけではありません。そのミニチュア版として課題文や図表が予め与えられる。先行研究調査の代替としての意味合いが大きいわけです。そうしたことを行うための基本的な能力や資質を大学入試小論文で測定しているのです。

大学入試小論文で与えられる課題文の論者や筆者の意見、主張を的確に短時間で捉えたうえで表現する能力図表ほかデータから読み取れることを分析し、記述する能力がなければ、大学でレポートを作成し、ゼミで文献講読の発表をすることは難しいと大学は捉えているということです。

したがって、大学入試小論文をあまり難しく捉えすぎても、さして意味がないことがわかると思います。

スクロールできます

さまざまな書き方

しかし、論文の「型」というのは、単純化して示すのは実は難しいものなのです。
『社会科学系のための「優秀論文」作成術―プロの学術論文から卒論まで』(川崎剛著、勁草書房刊)という本で紹介されている通り、自然科学における論文の「型」に比して、人文社会科学の「標準化された論文の『型』は曖昧で、かつ体系的には教授されていないのが現実」なのです。
それを著者は「若手研究者や大学院生にとってはノーハウがわからない、いわば徒手空拳といった大変深刻な状況」と述べている。

つまり、高校生にとって、論文の「型」がすんなりとわかるような状況にはないというのが現実です。

だからこそ、市販されている「小論文本」や他塾で示されたりする「型書きのススメ」のような、いわゆる「手っ取り早さ」を重視した「論文の書き方のマニュアル」なるものが広く流通することになるわけなのです。

先述の①問題意識・問題提示⇒②観察(の記述)⇒③分析⇒④考察という流れは、『優秀論文作成術』のような本で紹介されている大学卒業論文からプロの学術論文まで通底している(共通している)ごく基本的な要素を抽出しているに過ぎません。

つまり、当校独自の「論文の『型』」のようなものでは決してなく、論文形式のきわめて基本的な要素を当校が抽出したうえで代理してわかりやすく伝えているに過ぎないということです。

とはいえ、社会人として修学した大学院の修士課程、博士課程で「論文の書き方に『苦しんだ』経験」に基づいて、当校はそうした論文の基本的な要素を伝えることができます。

「教科書の読めない子どもたち」と大学入試小論文

『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』を新井紀子(国立情報学研究所社会共有知研究センター長・教授)が著したのがこの文章を記述している2023年から約5年前の2018年のことでした。

9割が教科書を読めていない」「『名門高校生・東大生』でも不安が残る読解力」というデータは、ある意味で衝撃的なものでした。

つまり、ほとんどの子どもたちが、「実は文章を読解できていない」ということが明らかになったからです。

このことは、大学入試小論文にも大きな影響を与えていると考えられます。なぜなら、大学が出題する小論文は
「このくらいの文章は読めないと困る」
「この水準の課題文であれば、60分の試験で要約400字と意見主張600字くらい書けないと困ります」
「このレベルの簡便な資料ならば、読み取れること、およびそこから敷衍し自身の考えを90分で合計1000字ほどで説明できるように」

というメッセージを平然と、そして明瞭に発信しているからです。

さて、ここで困るのは高校、保護者、塾・予備校の三者です。

高校教諭は、高校生に対して《論文とはどのようなものか》について教授し、訓練を施さねばなりません。
保護者の方は、①問題意識・問題提示⇒②観察(の記述)⇒③分析⇒④考察という論文の構造やルールを教えられないとしても、大学はなにを求めているのかを理解する必要があります。
そして、その教育訓練の受け皿として、当校を含めた塾や予備校がその役割を担っているというのが現状です。

大学は、かなり厳しい言い方をすれば、入試選考で「教科書の読めない子どもたち」をふるいにかけ、「なるべく入学させたくない」という本音を持っていると思われます。

少子化のなかで、「少しでも優秀な学生を集めたい」という願いと施策が着々と実行されているといえます。

大きな課題を抱えている大学小論文試験ではあるものの、今後いわゆるマークシート式の画一的な学力測定のみならず、面接や小論文による入学選考はより一層広がっていくでしょう。

当校は、受講生である高校生(や大学生、社会人)の方にできる限り、わかりやすく、
《論文とはどのようなものなのか》
《どのような答案小論文が大学教員から評価され、合格圏内とされるのか》
《具体的に”書ける”ようになるために、どのようなことを意識し、どのようなことに取り組めばよいのか》

をレクチャーしていきます。

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